不安障害とは?
不安障害とは、不安感や恐怖感、過度の心配や緊張を主な症状とする精神疾患のことです。ある環境や状況に対して、過剰な不安や恐怖が出ることによって、精神的な苦痛を感じることで、不安や恐怖を感じる状況を避けようとする回避行動により、日常生活に様々な支障をきたすようになる状態を「不安障害」と言います。
不安や恐怖という感情は、普段の生活の中で、多少の不安を感じることは普通です。しかし、不安感や恐怖感の度合いが、明らかに過剰であったり、長期間持続することで、心身に影響が出て、日常生活に支障が出ている場合は、不安障害の可能性が高いです。
以前では、この不安障害は「神経症」や「不安神経症」などと言われていました。また最近では、「障害」という文言が偏見につながるという見方もあり、その配慮から「不安症」と言われることもあります。
不安障害の種類
不安障害の種類には以下のものがあります。
- ①分離不安障害
- ②選択性緘黙症(せんたくせいかんもくしょう)
- ③限局性恐怖症
- ④広場恐怖症
- ⑤パニック障害
- ⑥社会不安障害
- ⑦全般性不安障害
- ⑧強迫性障害
- ⑨心的外傷後ストレス障害(PTSD)
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①分離不安障害
特定の人から離れる時の不安感が過剰になり、それに対しての回避行動をとることで、日常生活に支障が出るものを「分離不安障害」と言います。
乳幼児が母親から離れる時に抱く不安(分離不安)は正常であり、成長するにつれて不安感は軽減していきます。しかし、その不安が数カ月~数年も続くと子供の分離不安障害です。
子供
- 赤ちゃん返り
- 夜尿症
- 多動
- 暴力行動
大人
- 特定の人と離れている間、または離れることが予測されることで不安
- 特定の人が病気になったり、事故や災害に合うのではないかと不安
- 特定の人がいない状況、自分一人でいる状況が不安
②選択性緘黙症
選択性緘黙症とは、家ではちゃんと話ができるのに、ある特定の社会的状況(学校や会社)では、一貫して話すことができなくなる状態です。
- ある特定の社会的状況、場面では話すことができない
- 近所に人や先生など、特定の人と話せない
- 知らない人と話せない
- 言葉以外で意思表示をする
- 対人コミュニケーションに支障をきたしている
- 話したくても話せない
- 周囲との関りを避ける
③限局性恐怖症
限局性恐怖症とは、特定の対象物や状況に対して、過剰な恐怖を感じることで、めまいや吐き気、パニックや失神などの症状が出て、日常生活に支障が出てしまう状態です。
- 特定の対象物、状況(高所・昆虫・注射・雷)で、強い恐怖や不安を感じる
- 特定の対象物、状況を避ける
- 特定の対象物、状況になると、強い恐怖や不安に耐えている
④広場恐怖症
広場恐怖症は、「逃げ場がない状況」や、「自分がコントロールできない状況」に対して過剰な恐怖を感じ、徐々に行動範囲が狭くなり、公共機関が使えなくなったり、外出ができなくなったて引きこもってしまうこともあります。広場恐怖症はパニック障害との合併が多いです。
- 広い建物や場所にいると不安感や恐怖感がある
- 部屋が広いと眠れない
- 人気のない場所にいると不安や寂しくなる
- 電車や飛行機、エレベーターに乗ると不安や恐怖感ある
- 歯医者や美容院に行くと不安や恐怖感がある
- 人混みに行くと不安や恐怖感がある
⑤パニック障害
- 動悸
- 発汗
- 体や手足が震える
- 呼吸困難
- 胸の圧迫感・不快感
- 吐き気
- 腹痛
- めまい・ふらつき
- 自分自身ではないような感覚
- 気が狂う恐怖に襲われる
- 寒気・ほてり感
- 死ぬかもしれないと思う
パニック障害は突然このような症状や発作が出ます。一度パニックを起こすと、また同じ場所や同じ状況になると再びパニックを起こすのではないか、という「予期不安」に襲われ、外に出るのが怖くなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。
- 突然上記の症状が出る
- 発作は数分~30分以内に治まる
- また症状やパニックが起こるのではないかという不安が続いている
- 死ぬかもしれない、気が狂うかもしれないという不安が続いている
- 症状を起こした場所や状況に対する不安が続いている
- 広場恐怖症がある
⑥社会不安障害
社会不安障害は「大勢の人の前で話すのが緊張する」「初対面の人だと緊張したり恥ずかしいと思う」など、人からの注目や人と接することへの不安や緊張が過度となり、仕事や学校に行けないなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。
- 人前で字を書くと、手が震える
- 人前に出ると、頭が真っ白になったり大量の汗が出る
- 電話に出ると、声が震えたりひっくり返ったりする
- 人と会う前に、何日も前から悩む
- 知らない人と一緒にいる時、または会う時に、吐き気や冷や汗をかいたりする
- 誰かに話かけたくても、恥をかいてしまうのではと怖くてできない
- 人前で話すと、恥をかいてしまうのではと恐怖感がある
- 学校行事や人前で話すような状況などを避けることが多い
⑦全般性不安障害
全般性不安障害は、日常生活の中で、まだ来てもいない未来の出来事に対して過剰に不安感を感じてしまいます。これらの過剰な不安や心配によって日常生活に支障をきたします。
- 仕事で失敗をしないか不安
- 人に嫌われないか不安
- 周囲の期待にこたえられるか不安
- 時間通りに行動できるか不安
- 体重が増えないか不安
- 病気にならないか不安
- 不安によって眠れない
- 常に落ち着かず、緊張して神経が高ぶっている
- こういった不安な気持ちを制御することが難しいと思っている
⑧強迫性障害
強迫性障害は、ある考えや、イメージが何度も浮かんできて、同じことを繰り返す状態です。不安な気持ち(強迫観念)が頭にとりつき、余計に不安が増すことで、無意味な行動(強迫行為)を繰り返してしまい、日常生活に支障をきたしてしまいます
- 手が汚れているのではないかと思い、何度も手を洗いなおしてしまう
- 外出すると体が汚れる気がして外出できない
- 家の鍵を閉めたのか、ガスの元栓を切ったのか不安で何度も戻って確認してしまう
- 何度も繰り返しやり直さないといけなく、待ち合わせに遅れる
- 何でもないことでも、本当にこれでいいのか疑問に思ってしまう
- 交差点で人とすれ違った時、誰かに刺されるのではないかと考えてしまう
- 何度も確認してしまう
⑨心的外傷後ストレス障害(PTSD)
生死に関わるような危険な体験をしたり、その現場を目撃することで、強いショックを受けます。そしてそれが「トラウマ」と言われる心の傷になって残ることで発症するストレス障害を心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言います。
このPTSDは、トラウマとなっていることが、時間が経っても何度も、その体験が思い出され、また、その時感じた恐怖と同様な恐怖を感じ続けるので、日常生活にも支障が出ます。
- 生死に関わるような体験もしくは目撃したことがある
- その時の状況を突然思い出して苦痛を感じる
- その時の状況が夢に出てくる
- その時の状況が再び起きるのではないかと不安
- その時の状況に関することから避ける
- 未来は絶望的だと思っている
- 夜眠れないことが多い
まとめ
全てにおいて、日常生活に支障をきたしていることが前提となります。これらの症状が最低でも6ヵ月以上続いている場合は、不安障害の可能性があります。不安障害は、早期発見・早期治療が大切です。