首から腕が痛い!?そんな頚椎症の治療は?

近年、スマホやパソコンの大普及により、仕事や生活スタイルが変わってきています。それに伴って、首や肩がこったり、痛みがある人も非常に増えました。

「最初は首周りの怠さしかなかったけど、徐々に手がしびれてきた」という人も多いです。では、どうやって治せばいいのか?しびれが出て不安なので病院に行ったら手術を勧められた。なんてこともよく耳にします。

今回はそんな首の疾患である「頚椎症」の治療についての内容になっています。

頚椎症とは

背骨は、腰から頭まで積み木のように重なっています。その中で、首の7個の骨を「頚椎」と呼び一番上には頭が乗っています。頭の重さは体重の約10%と言われており、その重たい頭が上に乗っているため、日常から頚椎に負担がかかりやすいというのは容易に想像できるかと思います。

その頚椎の骨と骨の間には「椎間板」というものが存在しています。椎間板は90%が水分でできており、クッションの役割をしてくれます。普段からこの椎間板によって、頚椎への直接的な負担を和らげているのです。

頸椎症とは、その椎間板が変性することによって、肩や首のこりや痛みが出るたり、時には、神経障害をきたす場合もある疾患です。

原因

その椎間板が、加齢による変性によって水分が減少し、弾力性を失ったり形状を維持できなくなってしまい、クッションとしての役割を果たせなくなってしまいます。そうなると頚椎が不安定になり、一つ一つの頚椎の動きが硬くなったり、逆に過剰に動きすぎるという部分が出てきます。さらには、頚椎の変形が起こり、「骨棘」(こつきょく)と呼ばれる骨のトゲが形成されたり、靭帯などの周囲の組織が硬くなったり血流が悪くなります。その結果、頚椎への負担は増大し、肩や首の、痛みや怠さなどの症状が出てくるのです。

中には、椎間板の変性によって中の「髄核」(ずいかく)というゼリー状の組織が後方に突び出してしまい、周囲の神経を圧迫すると、しびれなどの神経症状が出現してきます。また、骨棘や靭帯の肥厚によっても神経を圧迫します。

飛び出した髄核が脊髄を圧迫するか、神経根を圧迫するかで病名が変わります。

  • 頚椎症性脊髄症
  • 頚椎症性神経根症

頚椎症の全てが神経を圧迫するものではなく、単に肩こりのような症状のみの場合もあります。

20代後半から徐々に椎間板の水分は減少していくと言われています。椎間板の加齢による変性には個人差がありますが、一般的には40~50歳ごろから始まります。頚椎症が、中高年者で多く発症しやすいと言われているのにはそういった理由もあるようです。

しかし、頸椎症の原因は全てが加齢によるものではありません。実は、ストレートネックや長時間の不良姿勢、首を良く動かす仕事やスポーツなども頚椎に負担をかける原因になるのです。

あなたも心当たりはありませんか?

症状

  • 首や肩のこりや痛み
  • 首から腕にかけての痛み
  • 手指の感覚障害、運動障害
  • 歩行障害
  • 膀胱直腸障害

神経の圧迫がない場合は、首や肩、肩甲骨、背中、腕の痛みや怠さ、しびれ感などが主な症状で、人によって訴え方は様々です。肩こりのような「首から肩甲骨の上の方が少し張ってる感じ」という症状だけの場合もあります。

頚椎症性脊髄症

頸椎症性脊髄症では、圧迫を受けているのが脊髄神経です。脊髄神経は背骨の真ん中に脳から伸びている神経です。

この症状は、首や肩のこりや痛み、首から腕にかけての痛み、手指のしびれなどが出てきます。手の症状は両側に出ることが多いです。徐々に手指のしびれや感覚が鈍くなる感覚異常や、ボタンをかけるなどの指先の細かな作業がしにくくなる手指の緻運動障害へと進行していきます。また、歩行時につまずきやすくなる歩行障害や、膀胱直腸障害も見られることがあります。

膀胱直腸障害

尿意や便意の感覚が鈍くなることで、排尿が不便になったり失禁したりします。その他、頻尿、便秘などの症状が出てきます。

頸椎症性神経根症

神経根とは、脊髄神経から左右に枝分かれした抹消神経の根本の部分で、頚部の抹消神経は主に上肢に伸びて、それぞれの筋肉や感覚を支配しています。

この症状は、頸椎症性脊髄症と似ていて、首や肩のこりや痛み、手指の痛みやしびれなどが出ます。また、手指の感覚障害や運動障害も出ます。脊髄症との違いは、症状は主に片側性に出ることや、歩行障害や膀胱直腸障害などの脊髄症状は出ないという点です。

治療法

頚椎症の治療法は、保存療法と手術療法に分けられます。治療は、基本的には保存療法から始めていきます。

保存療法

薬の処方として代表的なものが、ボルタレンやロキソニンなどの、ステロイドではない炎症を抑える薬です。これを非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)と言います。

また、ビタミンB12製剤で代表的なメチコバールは、ビタミンB12を補い、貧血や末梢神経を修復して、痛みや痺れを改善します。

注射

ブロック注射などで、痛み止めを直接患部に注入する方法です。これには、「痛みを押さえるだけで根本的な改善はしない」という意見もありますが、臨床では、「ブロック注射を数回打っただけで痛みが取れて、それ以来痛くない」という方もいます。

注射とリハビリを併用することで効果が上がるとも言われています。

リハビリ

頚椎牽引、電気治療、温熱療法、徒手療法などがあります。

・頚椎牽引

牽引は、頚椎の骨と骨の間を広げるように牽引し、重たい頭が乗って硬くなった筋肉を伸ばします。効果として、頸椎牽引は骨と骨の間が広がることはほとんど期待されませんが、筋肉を伸ばすことで、首や肩周囲の血流が促進されます。血流が促進することで症状が軽減することもよくあります。

・電気治療・温熱療法

電気治療や、温熱療法も血流を促進させる効果があります。電気治療は深部の筋肉に対して電気刺激を与えることで、筋を収縮弛緩させ、血流を促進することで除痛効果が期待できます。

・徒手療法

徒手療法にも色々な手技がありますが、中でも一般的に分かりやすいのは、マッサージやストレッチなどでしょう。

首や肩周囲の筋肉が硬くなっていることが多いので、その部分の緊張を改善させます。神経症状が出ている場合は首の無理なストレッチは危険です。特に上を向くような反らす動きはやらない方が良いでしょう。肩甲骨周囲や胸の筋肉のストレッチも効果的です。

しかし、症状の出ている首や肩周りだけ施術しても効果が出ないことも多いので、しっかり評価をしてどこが原因になっているのか調べることが重要です。例えば肩甲骨の位置の評価、頚椎から腰椎までの動きの評価、肩関節の状態など、全身を評価の対象にして診ていきます。

その原因は、首や肩以外の全身の筋や関節が関係している事も多いので、きちんと評価して、原因に対してアプローチすることが改善への近道です。

装具

頚椎症の装具で最も処方されるのは、ネックカラーです。ネックカラーは交通事故でのむち打ちになった場合によく使用されています。頸椎症でも、痛みが強いときや、首を動かすことで痛みが出たり、上肢にしびれが出たりする場合に使用します。痛みが強い時の一番の治療は「安静」です。ネックカラーを装着して頚部を安静に保ちます。

神経症状が出ていない軽度のものでは、このような治療を、数週間~3ヵ月継続することで、だいたいは改善していきます。しかし、神経症状が出ていて、これらを数ヵ月間継続しても、症状が緩和せず神経症状が取れない場合、または、症状が進行していて、日常生活に支障をきたす場合は手術の適応となります。

手術療法

group of surgeons in operating room at hospital

手術療法の目的は、

  • 除圧
  • 固定

です。脊椎の中の脊髄神経が通っている所を「脊柱管」(せきちゅうかん)と言います。その脊柱管を広げることで、圧迫を受けている神経(脊髄神経、神経根)への圧力を取り除き、神経症状を緩和します。

骨を取り除いた後はその部分が不安定になるので、自家骨や人工骨を移植し、プレートなどで固定します。自家骨は、自分の骨盤から採取することが多いです。

代表的な手術法です。

  • 前方除圧固定術
  • 後方除圧固定術

前方除圧固定術

前方からの圧迫が2椎間(3つの頚椎の間の2つの椎間板)までの病変の場合に適応になります。

頚椎の前方からアプローチする方法で、首の前には神経や血管など、大切な器官が存在してますので手術は慎重に行う必要があります。

首の前面に6~7cmくらいの範囲で皮膚切開を行います。そして、筋肉を左右に分け、食道、気管、反回神経、総頚動脈・静脈を避けながら侵入すると、頸椎の前面に到達します。そして、頸椎の前面から脊髄神経の通っている後方に向かって骨を削っていきます。

すると、神経を圧迫している椎間板や骨棘が確認されるので、原因となっている部分を取り除き、除圧します。そして、削った骨の部分に、自家骨や人工骨を移植し固定します。病変が2椎間にわたっていたり、頚椎が不安定な状態の時は、プレートとスクリューで頸椎を固定する場合もあります。

後方除圧固定術(椎弓形成術)

頚椎の後方からアプローチする方法で、多椎間にわたる病変にも適応になります。

・縦割法

縦割法は、頚椎の後方の真ん中(首を後ろから触って触れれる突起の部分)から骨切りを行い、左右に骨を広げることで脊柱管を広げ除圧します。(観音開きのような感じ)開いた部分は自家骨や人工骨を移植して固定します。

・片開き法

開き法は、先程の突起の部分から少し左右にずれた所に、脊柱管を構成している椎弓という部分があります。左右どちらかの椎弓に骨切りを入れ、真ん中の突起の部分を反対側に広げることで、脊柱管が広がり除圧します。開いた部分は同じように自家骨や人工骨で固定します。

・椎弓切除術

椎弓切除術は、除圧だけでは圧迫を取り切れない場合や、再発しそうな場合は、椎弓を切除します。神経が圧迫を受けている左右どちらかの椎弓を切除して除圧する術式です。これも同じように切除した部分には自家骨や人工骨を移植します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?加齢に伴って変性するものは、仕方ないと言えばそうかもしれません。しかし、日頃からの生活スタイルを見つめ直して、姿勢の改善や意識、首の動かし方などを工夫することで予防になったり、進行を遅らせることは可能です。たかが肩こりと思っていても、徐々に症状が悪化して手術を勧められる前に、一度日常生活を振り返ってみましょう。「スマホ首」という言葉も最近は流行っていますよ。

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