腹痛やお腹の張り、排便異常で悩まされている方は意外に多いのです。
そんな過敏性腸症候群のあなた。周りの人から姿勢が悪いとよく言われたりしてませんか??
実は、過敏性腸症候群と姿勢は関係が深いのです。
今回は、過敏性腸症候群と姿勢との関係についてご紹介していきます。
腸の働き
まずは、腸の働きを理解しましょう。腸は、小腸と大腸からなり、全長は7~9mもの長さがあります。
- 小腸
小腸は、全長6~7mほどの長さがあります。小腸の中でも部位によって名前があります。胃側から、十二指腸・空腸・回腸となり、大腸へと続きます。
- 大腸
大腸は、小腸より短く、全長1~1,5mの長さがあります。大腸も同じように部位によって名前があり、小腸側から、盲腸・上行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸・肛門へと続きます。
腸での役割は主に、消化・吸収・排泄です。食べた物は、食道を通って胃に入ります。その胃で分解され、小腸で、消化・吸収されます。小腸の内側の壁には、絨毛(じゅうもう)と呼ばれる粘膜のひだが存在しており、その中には、小さなリンパ管や毛細血管がたくさん存在してます。そこで栄養素の約90%が吸収されるのです。吸収された後、残った老廃物は 大腸に運ばれます。大腸では、水分を吸収し、便が作られます。大腸の内側の粘膜から粘液を出して、老廃物をすべりやすくし、特有の蠕動運動(ぜんどううんどう)によって直腸へ運ばれます。そして、肛門から排泄されるのです。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、原因不明の腹痛を伴う排便異常がみられる疾患です。腸の検査をしても、炎症や潰瘍などの異常が認められず、腹痛に伴って、下痢や便秘、腹部の膨満感などの症状が慢性的に持続します。「IBS」とも言われます。
日本では約10%の人が過敏性腸症候群に悩んでおり、男性と女性では1:1.6とやや女性に多い傾向になっています。20~40歳代と比較的若い年齢層に多く、男性は、慢性的な下痢を繰り返す「下痢型」、女性は慢性的な便秘を繰り返す「便秘型」が多いです。
症状
- 腹痛
- 腹部の不快感
- 腹部の膨満感
- 突然の下痢
- 便秘が続く
- よくガスが溜まる
- お腹がゴロゴロなる
- 排便の回数が多い
などの症状が出てきます。過敏性腸症候群は、これらの症状だけではなく、症状が出るせいで、「常に不安」という精神的な影響も出てきてしまい、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
- 会議中や試験中にトイレにいきたくなる
- お腹が痛くならないか不安
- 電車は各駅停車じゃないと不安
- どこに行ってもトイレの場所が気になる
このように、トイレに行けない環境になると、不安になり、よけいに行きたくなってしまうのです。実際に、通勤中や仕事中に、トイレに何度も行く場合もありますし、漏らす場合もあります。こういう経験をすることで、さらに不安になってしまい、またトイレに行けない環境になると腹痛などが出て行きたくなってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
原因
過敏性腸症候群になる原因は、はっきり解明されていませんが、以下のものが原因として考えられています。
- 姿勢
- ストレス
- 精神的な要因(うつ病、不安症)
- 生活習慣の乱れ
- 感染性腸炎後
などが影響していると考えられています。感染性腸炎の場合は、治った後に、過敏性腸症候群になりやすくなることが分かっています。原因で最も割合を占めるのが、姿勢やストレス、生活習慣の乱れ、精神的な要因などによる自律神経の乱れと言われています。
過敏性腸症候群と自律神経との関係は?
自律神経とは、生命維持のために必要な、代謝・循環・消化・発汗・心拍・排尿・排便などの機能を、自動的ににコントロールしており、重要な役割を担っている神経系です。内臓の働きもこの自律神経によって調節されているのです。
自律神経は大きく分けて3つの神経に分けられます。
- 交感神経
- 副交感神経
- 腸管神経
交感神経
交感神経は活動的な時に優位になります。交感神経が優位になると、腸の働きは抑制されます。
副交感神経
副交感神経は、リラックス時に優位になります。副交感神経が優位になると、腸の働きは促進されます。
腸管神経
腸管神経は、「第二の脳」とも呼ばれており、独自の神経ネットワークがあるので、脳からの指令がなくても、自律的に腸の調整をしてくれます。
これらの神経が、24時間お互いにバランスをとりながら働き続けてくれているのです。姿勢やストレス、生活習慣が問題で自律神経が乱れると、腸が正常に機能しなくなり、腸での蠕動運動が過剰になったり、知覚が過敏になったり、消化や吸収、水分の吸収調節機能が正常に機能せず、過敏性腸症候群の症状である、腹痛や下痢・便秘、ガスが溜まって腹部の膨満感などの症状が出てくるのです。
姿勢について
脊柱と骨盤
背骨は、骨盤から頭まで積み木のように重なっています。重なった一本の背骨を「脊柱」と言います。首の部分は頚椎と言われ、7個あります。背中の骨は胸椎と言われ、12個あります。腰の部分は腰椎と言われ、5個あります。正常な脊柱は、頚椎と腰椎では前に弯曲する「前弯」、これに対して胸椎は後ろに弯曲する「後弯」の形を形成しています。このように脊柱は前弯と後弯があり、横から見ると、S字状にカーブをした構造になっているのです。
理想的な姿勢
理想的な姿勢は、横から見て、くるぶし、膝関節、大転子(股関節)、肩峰(肩)、耳が一直線になる姿勢が良いとされています。不良姿勢は、この線上にずれが生じた状態です。
過敏性腸症候群と姿勢との関係は?
不良姿勢でのデスクワークや、腹筋の衰えから反り腰になってしまうことで、骨盤の傾きが変わります。骨盤が前に倒れすぎたり、後ろに倒れすぎると、その上にある脊柱に影響が出てきます。すると、脊柱の正常なS字状のカーブが崩れてしまいます。
脊柱の中や周囲には自律神経を含め、たくさんの神経が通っており、脳からその神経を伝ってたくさんの指令が出ています。脳から出る指令は、内臓や筋肉など、体のあちこちに神経伝達される事によって、体を動かしたり、呼吸をしたり、健康を維持することができています。その指令が上手く伝達されなくなると、体に様々な不調が出てきてしまいます。脊柱はその神経伝達の通り道となっているのです。
正常な脊柱のカーブが崩れてしまうことで、神経の伝達に不具合が生じてきます。自律神経の場合は、本来バランスよく作用することで、体の状態を保っているのですが、自律神経のバランスが乱れてしまうと、腸が正常に機能しなくなってしまいます。
典型的な不良姿勢は・・・
- 反り腰姿勢
- 猫背姿勢
反り腰姿勢
この姿勢は、お腹が前に出て、腰が反っている状態です。腰が反っている分、代償で、胸椎では後弯がひどくなります。そのため、頭の位置が前に出てしまっていることが多いです。
猫背姿勢
この姿勢は、骨盤が後ろに倒れてしまい腰椎の前弯が減少します。そして頭の位置が前に出てしまい、背中が丸くなってしまいます。
姿勢が悪くなると・・・
- 自律神経が乱れる
- 腸が下垂して機能低下
- リンパの流れが悪くなる
このようなことが起こってくるのです。
不良姿勢は、良い姿勢に比べて常に体に負担がかかっている状態で、体の動きの効率も悪くなり、疲労が溜まりやすくなります。そうなると自律神経にも影響が生じてしまいます。
姿勢が腸に影響するなんて想像もしてなかったという方も多いとは思いますが、姿勢が悪くなることで、自律神経は乱れ、腸が下垂して機能低下を起こし、リンパの流れも悪くなってしまうのです。特に猫背は、上半身が前かがみになるので、内臓を圧迫してしまいます。その結果、腸が過敏になって、過敏性腸症候群になりやすい状態ができてしまうのです。
リンパ
リンパは、体内での老廃物や疲労物質を排泄する作用と、細菌や病原体などを攻撃する免疫の働きがあります。手足の抹消から始まり各部位にあるリンパ節に合流します。腸は、人間の体で一番リンパが多い場所です。人体最大のリンパ器官とも言われています。ですので、リンパの流れは健康を維持するうえでも非常に大切です。その腸のリンパの流れが悪くなると、体内の老廃物や疲労物質が溜まってしまい過敏性腸症候群になりやすく、また、治りにくくなってしまうのです。
姿勢とリンパの流れ
姿勢が悪くなると、肋骨の動きが硬くなってしまいます。肋骨は左右に12本ずつ計24本あり、前は胸骨、後ろは胸椎に付き、胸郭をとり巻くようにあります。その中には肺があります。肺は呼吸する器官で、呼吸をするたびに、肋骨が広がるように動いているのです。その肋骨が硬くなることで、肺が膨らみきらず、呼吸が浅くなってしまうのです。呼吸が浅くなると、循環が悪くなり、全身の細胞へ酸素の供給が不十分になったり、リンパの流れも悪くなってしまうのです。
猫背の姿勢に多いのが、肩甲骨が開いて、肩が内巻きになっているパターンです。人間の体は、全身の3/4ものリンパが左肩に戻るように循環しています。不良姿勢や肩の内巻きなどによって、左の肩が硬くなってしまいます。左肩の周囲の筋肉や、関節の動きが悪くなることでリンパの流れが滞ってしまうのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?過敏性腸症候群の原因の多くは自律神経の乱れによるものです。自律神経が乱れる原因は様々ありますが、姿勢もその一つです。不良姿勢は自律神経の乱れにつながり、それが過敏性腸症候群の原因となってしまうのです。自分の姿勢を客観的に見ることはなかなかないと思いますが、どんな姿勢をしているのか知ってた方が良いですね。姿勢は、単に背骨や骨盤だけの問題だけでなく、頭の位置や足、内臓からも影響を受けるのです。仕事中の姿勢や普段からの癖、生活習慣を直しをすることで、過敏性腸症候群を改善できることも多いので、これを機に一度、自分の状態を見直してみてはどうでしょうか?