過敏性腸症候群は、何を食べて何を控えたら良いのか?
腹痛に悩まされている方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は、過敏性腸症候群と食事の関係についてご紹介していきますので、是非参考にしてみて下さい。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、腹痛に伴って、下痢や便秘が、慢性的もしくは、再発的に持続する状態です。また、ガスが溜まってお腹の張りが出る場合もあります。病院などで、腸の検査をしても異常が認められません。腸の運動の異常や知覚が過敏になることで、これらのような症状が出てきます。Irritable Bowel Syndromeの頭文字を取ってIBSと言います。
この過敏性腸症候群は、日本では約10%の人にみられ、20~40歳代に多く、男性より女性の方が1.6倍多くなります。男性の場合は、「下痢型」が多く、これは下痢を慢性的に繰り返す状態です。女性の場合は、「便秘型」が多く、これは慢性的な便秘になる状態です 。病院の消化器科を受診する人の3人に1人は、この過敏性腸症候群と言われています。
腸の働き
腸の働きは主に、
- 消化
- 吸収
- 排泄
です。口から摂取した食べた物は、胃で分解され、小腸で、消化・吸収されます。小腸の内側には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる粘膜のひだが存在し、その中に、小さなリンパ管や毛細血管が多数あります。この小腸では、栄養素の約90%が吸収されます。小腸を通った後は、 大腸に運ばれます。大腸では、水分を吸収し、残った老廃物が便となります。大腸の粘膜には、粘液を出して老廃物をすべりやすくする働きがあり、蠕動運動(ぜんどううんどう)によって直腸へ運ばれ便として排出されます。過敏性腸症候群による下痢や便秘は、この大腸が正常に働かなくなって起こります。
症状
- 腹痛
- 腹部の不快感
- 腹部の膨満感
- 下痢、便秘が続く
- おならがよく出る
- お腹がゴロゴロなる
などの症状が出てきます。腹部の膨満感は、便秘の場合に、腸内で悪玉菌が繁殖し腐敗発酵を起こし、腸内にガスが発生でするためです。
原因
過敏性腸症候群になる原因は、はっきりとは分かっていません。しかし、以下のようなものが原因として考えられています。
- 食生活の乱れ
- 姿勢
- ストレス
- 精神的な要因(うつ病、不安症)
- 感染性腸炎
などが影響していると考えられています。この中でも、食事は食べる物によって腸内環境に直接影響するので、重要な因子となってきます。また、ストレスや精神的な要因によって、自律神経が乱れてしまうことも大きな要因となります。
過敏性腸症候群の分類
下痢型
下痢型は、男性に多く見られます。突然、腹痛が起きて下痢の症状が出ます。特に、ストレスに反応しやすいので、会議中や通勤中など、すぐトイレに行けない状況になると、不安になり、腹痛や便意をもよおしてしまいます。ひどい場合は、電車も快速や特急に乗れず、各駅停車にしか乗れないという状態になってしまいます。このように、急に便意を感じたり、実際に漏らしたりすることで、不安感がストレスとなって、トイレに行けない状況で、腹痛が出てしまうのです。これは、大腸での蠕動運動が過剰になることで、水分が十分に吸収されず、軟便や下痢になるのです。
便秘型
便秘型は、女性に多く見られます。腹痛が起きて便意はあるのですが出ません。便意があるのに出ないので、便秘型はとても辛いです。下痢型のように、突然の腹痛や便意はありませんが、便が出ないのです。これは、大腸の蠕動運動が正常に働かないことで、便が出にくくなります。また、便が長時間大腸に溜まることで、水分吸収が過剰に起こり、コロコロとした硬い便になります。
混合型
下痢型の症状と、便秘型の症状が交互に繰り返されるタイプです。
ガス型
ガス型は、腹部の膨満感、つまりお腹が張って辛い状態です。これは大腸にガスが溜まることによって起こります。ガス型は、頻繁にガスが出たり、ガスの臭いが臭くなります。さらに、ガスだけでなく、下痢や便秘の症状も併発することが多いです。
過敏性腸症候群と食事の関係
過敏性腸症候群はストレスの影響を受けやすいですが、食生活によっても腸の状態は変わってきます。
過敏性腸症候群の下痢や便秘などの症状があると、せっかく摂った栄養素も腸内で吸収されずに便として排出されてしまいます。ですので、まずは腸内環境を整える食生活が大切です。
摂取した方が良い物
食物繊維
人間の体に必要な栄養素として5大栄養素があります。炭水化物、脂肪、たんぱく質は三大栄養素と言われ、エネルギーの原料となったり、体を作るために必要な栄養素です。これに、ビタミンとミネラルを加えると5大栄養素となります。
最近では、この5大栄養素に加え整腸効果のある、食物繊維が重要視されています。食物繊維が不足すると、腸の状態に影響が出たり、免疫機能にも影響が出ますので、食物繊維を入れた6大栄養素が人間の体には必要と言われています。
食物繊維は、
- 不溶性食物繊維
- 水溶性食物繊維
に分けられます。
・不溶性食物繊維
水に溶けない食物繊維です。不溶性食物繊維は水に溶けないので、水分を吸収することで便の量を増やします。便が増えると、腸を刺激して、蠕動運動を活発にします。これによって、排便がスムーズになるように促します。
レタス、キャベツ、たけのこ、ごぼう、ほうれん草、大豆、いも、きのこ類、豆類などに多く含まれています。
・水溶性食物繊維
水に溶ける食物繊維です。水溶性食物繊維は、水に溶けやすく、溶けるとゼリー状になり、便を柔らかくします。
海藻類、蓮根、らっきょう、昆布、こんにゃく、オクラ、りんご、バナナなどの果実類に多く含まれています。
下痢型の方は、不溶性食物繊維の過剰摂取により腸が刺激されてしまうので、水溶性食物繊維が良いとされています。また、お腹の張りや、ガスが気になるときは、お腹の中でガスを発生させる、いも類や豆類などは控えるようにしましょう。
食物繊維の摂取は、水溶性1:不溶性2の割合が理想的とされていますので、両方の食物繊維をバランスよく摂ることを心がけましょう。
体に合ったもの選ぶことで効果が期待できるもの
乳酸菌
乳酸菌の働きのひとつに、腸内菌のバランスをとることで、腸内環境を整える働きがあります。乳酸菌は、腸内にいる悪玉菌の繁殖を抑える作用を持っており、善玉菌の活性をサポートします。
乳酸菌を含むものは、ヨーグルト、チーズ、ヤクルトなどの乳製品が代表的です。
しかし、乳酸菌を摂取するうえで注意点があります。
- 乳酸菌は酸に弱いため、摂取しても、種類によっては、胃酸の力でそのほとんどが死滅してしまう場合もあります。
- 乳製品には乳糖が含まれており、乳糖は分解されにくいので、腸に残りやすく、刺激になって下痢を引き起こしてしまうことがあります。
乳酸菌には。ビフィズス菌、ガセリ菌、乳酸菌シロタ株、ラブレ菌、LG21乳酸菌、プラズマ乳酸菌などなど、350種類以上あり、人によって腸内環境が違うので、自分に合う乳酸菌を見つけるのが効果的です。
乳酸菌は腸内環境を整えるので、良いのですが、摂取することで下痢になる場合は、摂取する量や種類が、自分の体に合ってないかもしれません。どれをどれだけ摂取した時に、効果があったのかなかったのかなど、体の変化に目を向けてみましょう。自分に合った乳酸菌を見つけることが重要です。
発酵食品
乳酸菌を増やすためには、発酵食品の摂取が効果的です。味噌、キムチ、納豆、漬物など、これらの食品に多く含まれる植物性乳酸菌は生きたまま腸に届いて活動してくれます。
しかし、下痢型やガス型の場合は、乳酸菌と同じように、発酵食品の摂取が逆効果になることもあるので注意してください。下痢型は、大腸の蠕動運動が過剰になっていて、水分の吸収が不十分になっている状態です。そんな状態のところに、さらに刺激が入ると、よけいに下痢が悪化することがあります。
控えた方がいいもの
冷たい物
冷たい飲み物やアイスクリームなどは、腸を冷やす原因になるので控えた方が良いです。
香辛料
トウガラシやタバスコなど、香辛料は胃腸への刺激が強いので控えた方が良いです。
脂質の多い食べ物
揚げ物や洋菓子、脂身の多いものは、消化に時間がかかるため、腸に負担がかかってしまいます。
アルコール
過敏性腸症候群の人は、アルコールの摂取には注意が必要です。特に下痢症型の人は、お酒は控えた方が良いでしょう。
アルコールを体内に摂取することで、大腸での水分吸収が阻害されるのです。過敏性腸症候群じゃない人でも、お酒を飲んだ次の日に、腹痛や下痢を起こすことがあります。過敏性腸症候群の下痢型の場合は、アルコールを摂取すると、大腸での水分吸収をさらに妨げてしまうので、下痢の症状を悪化させてしまいます。
カフェイン
カフェインには腸に刺激を与えてしまうため、過敏性腸症候群の症状を悪化させる恐れがあります。また、カフェインは自律神経にも影響するので過敏性腸症候群の方は控えた方が良いです。カフェインを含むものは、コーヒー、チョコレート、緑茶、ウーロン茶、紅茶などがあります。
FODMAP食
FODMAPとは、
fermentable(発酵性)
oligosaccharides(オリゴ糖)
disaccharides(二糖類)
monosaccharides(単糖類)
and polyols(ポリオール)
の略語です。これらの糖類は、小腸で、消化。吸収されにくいため、大腸に運ばれると発酵が促進され、ガスが発生しやすくなったり、正常な水分吸収の機能が作用しなくなります。高FODMAP食によって、腹痛や下痢・便秘などを引き起こしてしまいます。なので、これらの摂取を少量にすることが大切です。これを「低FODMAP食」と言います。過敏性腸症候群の方には、有効な食事療法として注目されています。
FODMAPを多く含むものは、
- 小麦
- 玉ねぎ
- 大豆
- キャベツ
- ウインナー
- 乳製品
- はちみつ
- チョコレート
など、これ以外にもたくさんあります。低FODMAP食を、4~6週間続けることで、過敏性腸症候群には効果的と言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?過敏性腸症候群と食事は密接に関係しています。日々の食事の結果が、今の状態につながっているかもしれません。食生活の見直しは大切ですね。