へバーデン結節は、指の爪に近い関節が腫れて痛みが出る疾患です。
そんなへバーデン結節に対しては、どういう治療が効果があるのか?
今回は、へバーデン結節の治療についてご紹介していきます。
手の解剖
まずは、手の解剖を簡単に説明します。
片手の5本の指だけで、19本の細長い骨があります。指先の骨から、末節骨、中節骨、基節骨、中手骨という骨です。親指は短いので中節骨がありません。
指の関節にも名前がついています。
・DIP関節・・末節骨と中節骨の関節(第一関節)
・PIP関節・・中節骨と基節骨の関節(第二関節)
・MP関節・・基節骨と中手骨の関節
と言います。
これらの関節は靭帯などの軟部組織で構成されており、曲げ伸ばしという動きを可能にしてくれています。
へバーデン結節とは?
末節骨と中節骨の関節、DIP関節です。このDIP関節が変形し、腫れや痛みを引き起こすものを、へバーデン結節と言います。
へバーデン結節は、40代以降の女性に多く発症する、変形性関節症のひとつです。特に人差し指に発症することが多く、3~5指にも発症します。母指の発症はまれです。
変形性関節症とは
加齢によって軟骨が磨り減り、関節の隙間が狭くなります。そして関節の動きがスムーズでなくなり、関節自体が硬くなってしまいます。それによって、関節への負担が増大し、炎症が起こりやすくなり、痛みや腫れが出るものです。代表的なものは、変形性膝関節症です。
変形性膝関節症をご存知でしょうか?国民病とも言われており、最近では、耳にすることも多くなっている疾患です。その変形性膝関節症と同じような病態で、それが膝ではなく、指のDIP関節で起きたものをへバーデン結節と言います。
症状
へバーデン結節の主な症状は3つ。
- 痛み
- 腫れ
- 変形
具体的な症状は、
・DIP関節が太くなり、結節状に変形している
・関節が赤く腫れている
・関節を押さえると痛い
・じっとしてても痛い
・グーパーがやりづらい
・物をつかんだりすると痛い
・指先を使う動きが痛い、やりづらい
・関節が曲がった状態で固まる(関節拘縮)
などがあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
変形の度合いは、軽度のものから重度のものまで人によって様々です。重度のものは、関節の脱臼を伴います。
へバーデン結節の原因は?
へバーデン結節の原因は不明と言われています。その中でも有力視されている原因は、
- 使いすぎ
- 加齢
- 姿勢や筋肉のバランスの乱れ
- 体の使い方が下手
- 遺伝
- ホルモンバランスの乱れ
などが、原因の可能性が高いと言われています。
診断
病院へ行くと、診察で症状を聞き、レントゲンを撮ります。レントゲンでは、変形性関節症特有の所見が確認されます。特有の所見とは、
・関節の隙間が狭くなっている
・骨棘(こつきょく)と言う骨のトゲの形成
・関節面が白く硬くなる骨硬化像
などの所見です。
また、指の関節の病変は、必ずと言っていいほど、血液検査をします。これはリウマチとの鑑別をするために行われます。
指の変形、腫れ、痛みがあり、変形性関節症のレントゲン所見もみられ、血液検査異常なし(リウマチ因子陰性、抗CCP抗体陰性)であればへバーデン結節と診断されます。
へバーデン結節の治療は?
では、このへバーデン結節の治療には、どういうものが効果的なのでしょうか。
治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
保存療法
温める
患部を温めることで、血流を良くすることが重要です。ただし、症状が出て間もない時期や、ズキズキと痛みが強く、腫れがにどう時は、逆に冷やす方が良いです。基本的には温めることは大切です。普段から冷えないように注意することと、お風呂でしっかりと温もりましょう。整形外科などの病院では、温熱療法として、レーザー治療や、超音波などの機器を使用している所もあります。
運動療法
・ストレッチ
手首や指の筋肉をストレッチをして、筋肉の柔軟性、血流促進を促すことが重要です。
何かの動作をする時には、手首と指の関節は連動して動きます。これによって、たくさんの細かい動きができるようになっているのです。手首を動かす筋肉が硬くなって、動きが悪くなることで、指にも負担がかかってしまいます。なので、手首や指の筋肉の柔軟性の獲得は大切です。
・自分で出来るストレッチ
手首や指の筋肉は肘から伸びています。
方法は、肘を伸ばして、手の平を上に向けます。反対の手で、4本の指を持ち下に反らすようにストレッチをかけます。肘から手首までが伸びている感じがあればオッケーです。
次は、手の平を下に向けます。反対の手で、手の平が自分の方に向くように伸ばしていきます。さらに、その状態から、指を握るように曲げていくと、よりストレッチがかかります。
・関節可動域訓練
DIP関節が腫れて痛みが出ると、無意識のうちに、動かさないようにしてしまいます。すると、徐々に関節が硬くなってきます。これは、関節を動かさないことで、周りの組織の血流が悪くなり、変性して、硬くなってしまうのです。なので、関節を動かして可動域を出すことで、痛みが軽減することがあります。関節が硬くなると、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。関節の可動域の獲得は非常に重要です。
姿勢、筋肉のバランス調整
姿勢や筋肉のバランスが崩れると、指に負担がかかります。どうゆうことかと言いますと、全身は筋膜でつながっているということです。全身ボディースーツを着ているようなイメージです。
骨盤の歪み、顎の歪み、筋肉の硬さや左右のバランスが乱れると、筋肉の硬さに偏りができてしまい、姿勢も悪くなり、筋膜が引っ張られて、最先端の指に影響が出てしまうのです。
長袖のシャツを着ていると想像して下さい。シャツの肩の所をつまんで上に引っ張ってみてください。そうすると、手の袖の部分が上に引っ張られますよね?これは、肩の筋肉が硬くなると指先にまで影響が出るということです。
猫背の姿勢の場合、頭が前に出て、肩が内巻きになっていることがよくあります。これによって、首から肩の筋肉が硬くなり、指に影響を与えていることもあります。この場合は、姿勢を改善するするように治療をしていくことで、指の状態は改善するのです。では、姿勢を改善するにはどうすれば良いのか?しっかしと全身の状態を評価して、アプローチしていかないといけません。
指先に症状が出ていても、原因は指ではなく、別のところにある可能性があるということです。必ずしも「痛みの部位=治療部位」ではありません。その原因は、肩の筋肉が硬くなっているからなのか、骨盤が歪んでいるからなのか、内臓の不調によって体表の筋肉が硬くなっているのか、原因となる場所はいろんなところにあったりします。もし、肩が原因であれば、肩に対してアプローチをしないと改善しません。しっかりと全身の状態を評価して、その人の原因はどこにあるのかを考えて、治療していく事が重要になります。
自律神経を整える
へバーデン結節は、40代以降の女性に発症するということから、女性ホルモンの影響が考えられています。女性は、50歳前後で閉経を迎えます。この時期と、へバーデン結節発症の時期が、ちょうど重なっているのです。
女性ホルモンとは
女性ホルモンは、プロゲステロンとエストロゲンという2つのホルモンに分けられます。この2つのホルモンは、月経、妊娠、出産、授乳など、女性特有の体の変化に伴って、バランスを取りながら分泌量が変動しています。
さらに、エストロゲンは、骨や関節にも影響を与えています。関節の表面を覆っている軟骨を構成するコラーゲンというタンパク質があるおかげで、関節がスムーズに動くようになっているのです。そのコラーゲンの生成には、エストロゲンが関わっているのです。
閉経を迎える50歳前後くらいから、エストロゲンの分泌が減りはじめ、女性ホルモンのバランスが崩れてきます。エストロゲンの減少によって、コラーゲンの生成にも影響が出てしまい、関節への負担が増加してしまうのです。
このように、女性ホルモンがへバーデン結節の発症に関与していると言われています。
そして、女性ホルモンと自律神経は、お互いに影響しあっています。
自律神経とは
交感神経と副交感神経の2つからなる神経系で、代謝、呼吸、循環、体温調整、内臓、血圧など、無意識で作用している非常に重要な神経です。この2つの自律神経もお互いにバランスを取りながら体の調整をしています。
女性ホルモンと自律神経は、影響しあっているので、自律神経のバランスを整えることで、女性ホルモンのバランスが整いやすくなります。結果、自律神経を整えることが、へバーデン結節の治療に効果的だということです。
自律神経を整えるには、
- ストレス発散
- 生活習慣の見直し
が大切です。
ストレス発散
ストレスが溜まってしまうと自律神経が乱れてしまいます。なので、ストレスを取り除くことはかなり重要です。ストレス発散の方法は人により様々ですが、なにか趣味を見つけたり、好きな音楽を聴いたりと、気分転換をすることや、生活環境、仕事環境を変えるなどして、ストレスを少しでも発散していきましょう。また、軽い運動を定期的に行うことも、ストレスの発散に効果的です。
生活習慣の見直し
生活習慣を見直して、規則正しい1日の生活のリズムを作ることが大切です。バランスの取れた食事、適度な睡眠時間、休息時間の確保など、不規則な食生活を改善して生活リズムを整えていくことで、交感神経と副交感神経のバランスが安定してきます。またカフェインや飲酒、喫煙も控えめにすることが大切です。
手術療法
保存療法が効果がない場合、日常生活に支障がある場合、変形の矯正を希望される場合は、手術の適応になります。
手術法は、
- 関節固定術
- 人工関節置換術
- 関節形成術
があります。
関節固定術
末節骨と中節骨に穴をあけて、ピンとワイヤーで固定する手術です。DIP関節を一番機能しやすい角度で固定し、痛みが取れるというのが最大のメリットです。関節は固定されますが、意外に生活には支障をきたさないのです。
人工関節置換術
関節面の損傷している部分を切除し、人工関節に置き換える手術です。
関節形成術
変形した部分の骨を削ったり、骨棘を切除して、関節の形を綺麗に整えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?へバーデン結節は指先に症状が出ますが、患部だけを治療しても改善しない場合もあります。しっかりと全身の状態を評価して、調整していくことが必要になることもあります。指は日常的によく使うところなので、しっかりと改善したいですね。