赤ちゃんも無事に生まれ、大変だった妊婦生活、あの辛かったつわりから解放されたけども・・・
なぜか気分がスッキリしない。
ということはありませんか?
もしそうなのであれば、それは産後うつかもしれません。
今回は、産後うつの原因や症状、セルフチェックから治療をご紹介します。
産後うつとは
産後うつとはその名の通り、出産後にうつ病にかかることです。
出産後の女性の約10%、10人に1人がなると言われています。産後2~4週後に発症することが多く、一般的には、産後6ヵ月までが発症しやすい時期で、全体的に産後1年以内に発症することがほとんどです。
産後の1ヵ月健診では分からない事も多いです。産後の1ヵ月というと、ちょうど里帰りをして自宅に戻ってくる時期と重なります。こういうことも関係あるのかもしれません。
実家にいるときは、自分の親のサポートがあり甘えることができます。そして、実家から自宅に戻ってくると、本当の育児が始まるのです。
産後うつの度合いもママによって様々です。軽度のものから重度のものまであります。
原因
ホルモンバランスの乱れ
妊娠中と出産後では、女性ホルモンのバランスが変化します。女性ホルモンとは2つに分けられ、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンです。この女性ホルモンによって妊娠を維持していたのですが、出産すると今度は、プロラクチンと言われる授乳のための別のホルモンが分泌されます。このようにホルモンバランスの変化によって、自律神経が乱れ、産後うつが発症する原因になるのです。
自律神経とは
交感神経と副交感神経の2つがあります。
交感神経は、日中の活動しているときや、スポーツしているときなどに働きます。
副交感神経は、睡眠やリラックスしているときに働きます。
これらの神経はお互いに反対の働きがあり、1日の中でバランスをとりながら、私たちの身体をコントロールしている神経です。この自律神経が乱れることで、産後に関係なくうつ病の原因となるのです。
育児のストレス
当然のことですが、ママはしっかりと赤ちゃんを育てなければならないと思っています。しかし、これがプレッシャーになってストレスにつながるのです。
約10ヵ月自分のお腹で赤ちゃんを育てた後、出産し、疲労した身体が回復する時間もないまま、次は育児に追われます。
昼夜問わず大声で泣く赤ちゃん。うるさいのはあたりまえ。ママは授乳、抱っこ、おむつの交換、寝かしつけと妊娠中よりも大変な生活になるのです。
また、寝かしつけたとしても赤ちゃんは1~2時間おきに夜泣きをします。ママはその都度起きて授乳をし、再び寝かしつけます。これが毎日続くと当然寝不足になってしまいます。ママは赤ちゃん中心の生活を強いられるのです。
夜泣きをしても旦那さんは仕事があるのでママに任せっきり。日中も赤ちゃんが寝ているときに、洗濯や家事などをしないといけないので、十分に食事もとれず、昼寝もできずと、慢性的な睡眠不足になってしまいます。
このように睡眠不足からストレスが溜まったり、体調不良につながって、うつ病の原因になってしまうのです。
周囲の環境のストレス
旦那さんに育児や家事をお願いしても、仕事で疲れているから手伝ってくれないことが原因になったり、自分の両親などの育児や家事のサポートがない状態はかなり辛いです。
姑からの育児に対しての口出しに、何も言えなかったり、自分の母も娘のためと思い、良かれと思って育児に対して口出しすることがプレッシャーになることだってあります。そういうのが蓄積されてストレスが溜まるのです。
また、周りに話し相手や、ママ友がいなく孤独な育児生活を送っていたり、経済的な不安があることもストレスの原因になります。
産後うつになりやすい性格
- 真面目
- 几帳面
- 完璧主義
- 人に頼らない
このような性格の人は産後うつになりやすいです。
赤ちゃんの世話はもちろんきちんとして、新生児がいるので家はほこり一つ残さないように掃除。旦那さんへの食事の準備など、全てを完璧にしようとするとママはストレスが溜まる一方です。
症状
落ち込んだ状態が一時的ならマタニティブルーで終わることが多いですが、長期にわたって続くようであれば産後うつの可能性があります。その症状は、
- 不安感
- 涙もろくなる
- イライラする
- 気分が落ち込む
- 外出が億劫
- 食欲不振
- 無感情
- 不眠
- 子供がかわいいと思えない
- 自分を責める
- 自殺願望
などがあり、ママによって様々です。
マタニティブルーとの違い
マタニティブルーとは、産後のストレスやプレッシャーによって、一時的な軽いうつの様な状態になることです。
妊産婦の20~50%のママが経験すると言われています。産後、数日後から症状が出やすく、数日~2週間くらいで自然とおさまるのがほとんどです。産後うつとは異なり、病気ではないため治療を必要としません。
マタニティブルーの症状は、情緒不安定になったり、不眠や食欲不振になったりと、産後うつと似ています。もし1カ月以上その状態が続くようなら、産後うつの可能性があるので病院を受診しましょう。
産後の三大危機
出産は家族が一人増えるのでとても嬉しいことです。しかしその出産後には、思いもよらないことが待ち受けているので注意しましょう。
産後うつによる自殺
厚生労働省では、2016年までの2年間で、産後1年以内に自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人という報告があります。
この期間の妊産婦の死因では、がんや心疾患を上回り、自殺が最も多く、産後うつの悪化が影響とみているそうです。
乳児虐待
厚生労働省によると、2013年の年齢別の他殺被害者の件数では、
0歳が40%以上と最も多く、次いで1歳が多いという報告があります。死亡させた理由の上位は「育児に対する不安や、育児負担感」「産後うつ、育児ノイローゼ」が多く、主な加害者は実母が80%でした。
産後うつは、虐待にもつながるということです。
早期離婚
厚生労働省によると、母子世帯になったときの末子の年齢は、0~2歳までが最も多いと報告があります。これは、産後2年以内の夫婦の離婚が最も多いという事です。
原因は「産後クライシス」といわれ、出産後に妻が夫への愛情が急激に減少することです。特に第一子の産後は離婚の第一関門と言われており、離婚が多くなります。その原因は「夫のねぎらい」と「夫の家事・育児への参加度」の問題です。
エジンバラ産後うつ病自己評価票
エジンバラ産後うつ病自己評価票は、国際的に普及している、産後うつ病のチェック表で自己記入式質問紙です。
評価方法は、10項目に対して0~3点の4段階で評価していくものです。過去7日間に感じたことで最も近い答えを選びます。
- 笑うことができたし、物事の面白い面もわかった
- 物事を楽しみにして待った
- 物事がうまくいかなかった時、自分を不必要に責めた
- はっきりとした理由もないのに、不安になったり心配した
- はっきりとした理由もないなに、恐怖に襲われた
- することがたくさんあって大変だった
- 不幸せなので、眠りにくかった
- 悲しくなったり、惨めになった
- 不幸せなので、泣けてきた
- 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた
合計点は最小0点、最大30点になります。9点以上だと、産後うつの可能性があります。
心配なママは、一度試してみてはどうでしょうか?
治療
ママの不安、ストレスを取り除くことが一番の治療です。
相談機関から受診を進められた場合や、症状が改善しない場合は、心療内科・精神科を受診し、しっかりと治療しましょう。
治療法は主に3つあります。
カウンセリング
カウンセリングによってママの不安やストレスを緩和する、もしくは取り除くことを目的とします。育児や夫婦の相談や、夫のサポートの促しなどで、ママの不安やストレスを少しづつ改善していきます。
投薬治療
抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬など用いて治療を行います。授乳中の場合は、母乳に影響の出ない薬を処方してもらいましょう。
入院
入院しながらゆっくりと心と体の疲労とストレスを緩和させます。入院中も、カウンセリングを受け、投薬治療を行います。
対策
産後うつにならないためにも、事前に対策をしておくと良いです。
- 睡眠時間の確保
- 一人の時間の確保
- 周囲に愚痴を吐く
- 旦那さんの理解
- 完璧を目指さない
などが産後うつを予防できる対策です。
とにかく、一人で頑張りすぎないことです。周囲の人に協力してもらい、夫、両親、義理の両親、友人など、周りの人に甘えてください。また、市や国の制度など受けられるサポートは受ける方が良いです。
相談窓口には色々あります。
- 精神保健福祉センター
- 子育て・女性健康支援センター
- 各都道府県、市町村の保健センター
などの相談窓口に相談し、アドバイスを受けたり、専門機関を紹介してもらいましょう。
その他にも、
- 子育てホットライン ママさん110番
- 子育て・思春期・更年期 女性のあらゆる相談室
- エンゼル110番「育児に関する無料電話相談」
などがあります。いっぱいいっぱいになる前に相談してみてください。
ママという責任があるのは当然ですが、そのママが体を崩してしまうと本末転倒です。小さい子供は、ママのちょっとした変化に敏感で影響を受けやすいのです。
助成制度
2017年より、産後うつの予防や新生児への虐待予防を図るために、産後2週後と1ヵ月後に産婦健康検査が実施されており、受診費用の助成があります。
事業を導入する自治体では補助券などによって多くの人が無料で受けられ、出産した医療機関以外での健診も対象となるようです。
実施されている市町村は増えつつありますが、全国どこでも実施されているわけではないので、一度確認してみて下さい。
対象となる方
産婦健康検査事業を実施する市に居住する、出産後8週以内の方
まとめ
今回は産後うつについてお話ししました。
産後うつにならないように、予防・対策が大事です。
出産はママしかできませんが、育児や家事は旦那さんでもできます。夫婦で協力して楽しい家庭を築いていきたいですね。