「悪阻(つわり)」とは、妊娠することによって引き起こされる、妊婦特有の症状のことです。
実際に妊婦の多くが悪阻を経験します。
悪阻には原因があるのか?どんな症状が出るのか?解消法はあるのか?
と気になっている方も多いのではないでしょうか。
妊娠したら絶対に悪阻が起きるのではなくだいたい8割くらいの人に起きるそうです。
今回はそんなつらい悪阻について説明していきますので参考にしてみて下さい。
悪阻
早い場合は、妊娠4週目から症状が出はじめ、妊娠12~16週目に症状が落ちついてくるのが一般的です。
悪阻には、入院するくらい重症になるケースもあれば、軽い眠気くらいの悪阻と人によって症状や期間は様々です。
悪阻の原因は?
まず、悪阻の原因は何なのでしょうか?
悪阻の原因は、今のところ医学的に解明されていませんが、いろんな説があるのでご紹介していきましょう。
ホルモン説
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンは、妊娠すると分泌されるホルモンです。
このホルモンは、黄体からプロゲステロンというホルモンを分泌させます。それによって、黄体が退化するのを防ぎ、子宮で妊娠を状態を維持できるように環境を整えてくれます。
このように、体内ではホルモン分泌などが起こり、体の状態が変化していきます。
すると、体がその変化についていけずに悪阻が起こると言われています。
体質の変化によるもの
人間の体はアルカリ性です。
妊娠すると、体が酸性になってしまうので、それをアルカリ性に戻そうとするために悪阻が起きると言われています。
悪阻のときに、肉やご飯が食べられなくなるという経験はありませんか?果物や野菜なら食べられるという人が多いようですが、これは体をアルカリ性に戻そうとする働きと言われています。
精神的なもの
妊娠したことによって、不安やストレスが悪阻を引き起こしているという説です。
体の拒絶反応
お腹に赤ちゃんが出来ることによって、母体が胎児を異物とみなすアレルギー反応の一種ではないかという説です。
自律神経の乱れ
妊娠によってホルモンのバランスが乱れ、そのせいで自律神経が乱れてしまい、悪阻が起きるという説です。
などが代表的な説です。
悪阻の症状は?
では悪阻が起こるとどのような症状がでるのでしょうか?
むかつき、吐き気、嘔吐
これは、悪阻の中でも多くの人が経験し、実際に嘔吐する場合もあります。
吐き気だけでなく、胃のむかつきや胃痛を伴うこともあります。たまに、船酔いしている感覚と言われる人もいます。
中には、吐きすぎて1週間に3キロ痩せる人もいるくらいです。
嘔吐を繰り返してしまう場合は、体が脱水状態に陥ってしまうので、点滴が必要になることもあります。
眠気
妊娠していない時に比べると、日頃から眠気を感じるようになります。たくさん寝たのにまだ眠たい、といったこともあります。
臭いに敏感になる
今まで気にならかった臭いが、妊娠によって敏感になることがあります。
食事の時の料理の臭いが気持ち悪いとか、普段使っている洗剤や石鹸の臭いがダメになったりと、何の臭いで気持ち悪くなるかは人それぞれです。なので外出時にマスクを着ける人も少なくありません。
この臭いは大丈夫というアロマオイルをハンカチに1滴たらして持ち歩く人もいるほどです。
偏食傾向になる
妊娠する前は、好き嫌いなく何でも食べていたのに、妊娠してからは特定のものしか食べられなくなったり、妊娠前は、そんなに自ら進んで食べたり飲まなかった物を毎日飲み食べするようになることもあります。
例えば、炭酸水とかいちご、レモン、オロナミンC、ゼリーなど、これも人によって違います。
普段の食事が全くのどを通らない場合は、食べれるものは何でもいいのでちょっとでも食べるようにしましょう。
食べづわり
何かを口に入れたり、何かを食べていないと気持ちが悪くなる状態です。
今までは、物を食べるとすぐ吐いてた吐きづわりの人が、急に、常に何かを口に入れてないと気が済まない食べづわりに変わる人もいます。またその逆のパターンの人もいます。
便秘
妊娠中はホルモンのバランスが崩れて腸の活動が弱くなります。その上、食べられなくなったり、吐いてしまったりで食事の量や、水分の量が減ってしまうことで、便が出にくくなります。
唾液が多くなる
妊娠するとホルモンの影響で唾液が増加します。そのせいで口の中が気持ち悪くなり、吐き気を引き起こすこともあります。
口の中がネバネバしたりする感覚が気持ち悪く、唾液を飲み込むのも気持ち悪くなり、飲み込むたびに吐き気をもよおしてしまうのです。
など症状は人によって様々なのです。
中には、お風呂から出たら立てなくてその場で横になる人や、家に帰ってきたら玄関で倒れこむといったひどい悪阻の人もいるくらいです。
妊娠悪阻
このように、症状が人それぞれの悪阻ですが、これらの症状が、進行して重症化したものを「妊娠悪阻」(にんしんおそ)といいます。
悪阻のある人の中で妊娠悪阻になる人は、1~5%といわれています。
悪阻が重症化すると、繰り返し何度も嘔吐をする、体重の激減、水分がとれない、ほとんどトイレに行かなくなった、といった症状が見られます。
一般的な悪阻との違い
- 体重が妊娠前より10%以上減少
- 口から栄養や水分が摂取できない
- 尿中のケトン体が陽性
尿中のケトン体の量は、妊娠悪阻の症状の程度を測る重要な数値とされています。
妊娠悪阻の3段階
この妊娠悪阻は3段階にわけられてます。
1期
何度も嘔吐を繰り返し、食べることができなくなります。食べられないし食べても吐いてしまうので、体重の減少が起こってきます。
また、体が脱水状態に陥ってしまうので、尿の量が減少し、喉の渇きやめまいなどの症状が出てきます。
2期
食べることができないので、体内のエネルギー源である、ブドウ糖が不足してしまいます。そうなると、エネルギーが必要になったときには、ブドウ糖が体内に足りてないので、脂肪をエネルギーとして分解し始めます。この脂肪を分解する過程で作られるものがケトン体です。
その結果、尿中のケトン体が陽性になります。このケトン体が尿中に出てくることで、飢餓状態になっているということを表します。
また、脱水状態により尿中のタンパクも陽性になり、低たんぱく血症が起こってしまいます。
この状態になると入院するレベルです。
3期
さらに症状が進行すると、幻覚、幻聴、意識障害などの脳神経症状があらわれます。
ここまでくると、母体、胎児ともに危険な状態です。
最悪の場合、命に危険が及ぶ可能性が出てくるので、妊娠の継続が難しくなります。
重篤化することで起こりうる可能性のある病気は、ウェルニッケ脳症と深部静脈血栓症です。
ウェルニッケ脳症とは、妊娠悪阻によって、食事が満足に取れず栄養不足に陥り、特にビタミンB1が不足することで発症します。
これは、眼球運動障害、まともに歩けなくなる失調性歩行、意識障害、などの3つが主な症状である、神経症状が出ます。重症化した場合、命の危険を伴いますので非常に危険です。割合的には0.1%ほどですが、恐ろしい病気です。
深部静脈血栓症とは、繰り返しの嘔吐によって、脱水状態になっている場合に起こりやすくなります。脱水状態だと血液は濃くなり流れが悪くなります。
そして、深部静脈の中の血液が固まってしまい、血栓(けっせん)と呼ばれる血液のかたまりができます。
長期間寝た状態で、急に立ち上がった時などに、この血栓が剥がれて血管内を流れて血管をふさいでしまう病気です。
肺の血管に詰まると肺塞栓症といい、急に呼吸困難や胸痛が起こり、重症の場合は20~30%の確率で死亡する怖い病気です。
こうならないためにも、早い段階で病院を受診してください。
病院へ行くタイミング
ではどうなったら病院に行けばいいのでしょうか?
- 自己判断は難しいと思いますが、やはり、
- 何も飲めない、食べれない
- 嘔吐を何度も繰り返す
- 体重の激減
- トイレの回数が減り尿が濃い
基本的にこれらが基準になりますので、このような症状が出たときは我慢せずに、早い目に病院を受診してください。
悪阻の解消法
悪阻の原因はまだ解明されていませんが、悪阻が辛いときの解消法はあるのでしょうか?
悪阻の症状は人によって様々です。そのため、これをすれば絶対に悪阻が治る、マシになるというようなことはありません。
ですが、色んなことを試してみることで、自分に合った悪阻の解消法が見つかるかもしれません。
ビタミンB6の摂取
ビタミンB6にはつわり症状に効果的です。悪阻で入院した時の点滴もこのビタミンB6が含まれています。
ビタミンB6を含む食べ物は、
- にんにく
- とうがらし
- モロヘイヤ
- バナナ
- アボカド
- まぐろ
- ブロッコリー
などです。食欲のある時に食べてみて下さい。
アロマ
アロマランプやコップやティッシュにアロマオイルを数滴たらしての芳香浴があります。妊婦でも可能なものを選び、レモンやグレープフルーツなどの柑橘系が効果的だそうです。
しかし、どの臭いも気分が悪くなるという場合は、無理にしないでください。
食べれるときに食べれるものを食べる
こんなものは栄養がないから食べない、こんな夜中に食べるのは良くない、食べ過ぎてしまったなど、悪阻がひどいときは、あまり食事の量や時間帯、栄養バランスを気にし過ぎず、食べれるものを食べれるときに食べましょう。
レモンなど柑橘類のものや、ゼリーやプリン、アイスや氷などは比較的食べやすいと言われているものです。
ベッドのそばに、小さいおにぎりや、ゼリーなど、いつでも食べられるものを置いておくと良いでしょう。
夫や周りの人の協力
悪阻がひどいときは、両親や旦那さんに協力してもらい、出来るだけ自分が楽になる生活にしましょう。
しかし、なかなか他人は自分の感じている悪阻のつらさはわかってくれません。悪阻を経験したことのある人であれば分かってくれるはずです。
特に、旦那さんは男性ですし悪阻を経験することができないので、このつらさを分かってもらうのは難しいと思います。ただ理解はしてもらった方がいいです。そして、旦那さんができることはやってもらうように協力してもらいましょう。
周りの理解やサポートがあるだけでも全然違います。
眠いときは寝る
眠たいときは時間を気にせず寝て下さい。
まとめ
悪阻を解消する方法はたくさんありますが、正解がないのでどれが自分にとって効果的なのか、試しながら見つけていってもらえたらと思います。
自分に合った解消法が見つかる人もいれば、どれも効果がないという人もいます。
充実した妊娠ライフを送るためにも、周りの人のサポートは必要になりますね。