首から肩にかけて重たい、首が怠い、背中が張っている、頭痛がするなど、肩こりは現代社会において切っても切り離せないものになりました。
ひどくなるとめまいや吐き気を伴うこともあります。
日本では肩こりを訴える人は約4000万人にもなり、代表的な国民病のひとつです。
厚生労働省による国民生活基礎調査(2015年)における有訴者率で男性の2位、女性の1位を占める症状である(ちなみに男性の1位女性の2位は腰痛です)と報告されています。
日本では夏目漱石の小説「門」に
「指で押してみると、首と肩の継ぎ目の少し背中へと寄った局部が石のように凝っていた」
という文章があります。
原因は意外と多い
- 不良姿勢
- なで肩、ストレートネック
- ストレス
- 睡眠不足
- 運動不足・眼精疲労
- 歯の噛合わせが悪い
- 自律神経の乱れ
- 内科的疾患(狭心症、心筋梗塞、肝臓や肺疾患、高血圧など)
- 整形外科的疾患(頚椎症、頚椎ヘルニア、四十肩、胸郭出口症候群など)
などなどたくさんの原因があります。
原因が多ければ多いほど肩こりを訴える人は増えてくるので、まず原因を取り除くことを考えましょう。
といっても原因がはっきり分からないということもありますので、今回は、その原因の中で最も多いのではないか、と言われている不良姿勢について説明していきます。
不良姿勢
スマートフォン依存
普段電車に乗ると、周りを見渡せば下を向いてスマートフォンをいじってる人がほとんどです。電車に乗らなくても、そこらへんで歩きながらスマートフォンをいじってる人が非常に増えました。
毎日の仕事でパソコンを使うのは当たり前で、スターバックスやマクドナルドでも、コーヒー片手に足を組みパソコンをしている人をよく見かけます。
このような光景は日常茶飯事です。
これらは慢性的な不良姿勢を引き起こします。
私たちの生活に欠かせない存在となったパソコンやスマートフォンは、手軽で便利な代償として、様々な弊害の原因にもなっています。
特に「スマートフォン依存」は深刻な問題です。
今やスマートフォンの国内普及率は、10~30代で約90%、60代でも約55%の人が利用しているといわれています。
スマートフォンの1日の平均利用時間は、約2時間といわれており、それを1年間で計算するとなんと、700時間以上も不良姿勢を強いられていることになります。
最近では、メールや電話だけでなく、facebookなどのSNSでの交流や、ニュースなどの情報系はスマートフォンでチェックするといった、スマートフォンならではのアプリケーションを使う時間が長いようです。
こういった便利な機能は、朝の起床から通勤・通学、会社や学校、そして就寝するまで、あらゆる場面で使われ、スマホ利用時間は年々増える一方と言えます。
このようにスマートフォンの長時間の使用により生じる、肩こりや首の怠さ、手の腱鞘炎、眼精疲労や視力低下、ドライアイなどの症状の総称が「スマートフォン症候群」といわれ、スマートフォンの利用に関しては、肩こりだけでなく、身体の様々な不調につながってきます。
パソコンやスマートフォンを使用しているひとを横から見ると、ほとんどのひとが頭が前に出てしまってます。これは「スマホ首」ともいわれており、ストレートネックにつながってしまうこともあるのです。
頭の位置
本来の正常な頚椎は前弯しており、これによって頭の重さを筋肉で上手に支える仕組みになっています。
人間の頭は体重の約10%と重たく、首を前に30度傾けると18kg、60度で27kgもの負荷がかかってしまいます。
ストレートネックになると、頭の位置や首の角度が変わり、筋肉への負担が増えてくるのです。
つまり姿勢をいかに良く保つかが肩こり解消の重要なポイントになります。
典型的な不良姿勢は、頭が前に出て、背中が丸くなり、肩が内巻きになってしまうパターンです。
あなたは大丈夫ですか?
一度パソコンやスマートフォンをしているときの姿勢を写真に撮って見て下さい。自分の不良姿勢を自分の目で確認して脳にインプットする。これはとても大事なことです。
それをすることで、いったん脳にインプットされた自分の不良姿勢を思い出すことができるので、姿勢を良くしようと意識しやすくなります。
こういった慢性的な不良姿勢の結果、肩こりとして症状に出てきてしまいます。
肩こりのメカニズム
不良姿勢の状態で筋肉が硬くなる
↓
筋肉の中の毛細血管の血流が悪くなる
↓
筋肉が酸欠状態になり老廃物が溜まる
↓
筋肉の細胞から発痛物質が出て神経を刺激
↓
肩こりの症状出現
このような流れで肩こりは出てきます。
さらに、姿勢不良は筋肉が硬くなるだけでなく、肋骨の動きも硬くなります。
実は肋骨は前後左右に動きます。左右に12本づづ、計24本あり、肺の周りを囲んでいます。
肋骨の動きが硬くなることで呼吸が浅くなってしまうのです。
呼吸が浅くなると息を吸う時に無意識に普段以上に頑張って息を吸い込もうとします。
この時頑張ってしまう筋肉が先程の首から肩にかけての筋肉です。硬くなっている筋肉を余計に使おうとするのでストレスがかかってしまい悪循環に陥ってしまいます。
この悪循環によって頑固な肩こりと付き合っていく生活に陥ってしまうのです。
解消するには
そうなってしまうとだいたいの人は、マッサージ屋さんや整骨院に行って揉んでもらったりしますが、全然良くならない。むしろ揉んだところが揉み返して痛くなったりする経験がある人は少なくないはずです。
それ以外にでも、湿布を貼っても病院で注射をしても、イマイチ効果がないと悩んでいる人は非常に多いのが現状です。
では、そんな頑固な肩こりをどうやって解消すればいいのでしょうか。
その方法は、
①良い姿勢を意識する
②姿勢を良くする運動
③ストレッチ
最低この3つは毎日行いましょう。
①良い姿勢を意識する
「良い姿勢をしてください」と言うと、胸をはる人が多いのですが、ポイントは胸をはるのではなく肩甲骨を寄せることです。
長時間のパソコンやスマートフォンの使用で、背中が丸くなって肩甲骨が外に開いてしまっているので、逆に肩甲骨を背骨の方に寄せます。
そして、頭から腰まで続く一本の背骨を、上下に伸ばすように頭のってっぺんを1cm上に突き上げます。これが良い姿勢です。この時にお腹周りに力が入っているのが感じられると思いますが、この筋肉が次に説明する重要なインナーマッスルの筋肉です。
最初は常にこの姿勢を保つのはなかなか難しいので、気が付いたときに意識して行ってみて下さい。
②姿勢を良くする運動
姿勢は体幹のインナーマッスルが重要になってきます。
インナーマッスルがしっかりしてる人は姿勢が良いです。スポーツ選手はほとんどがこのトレーニングを取り入れているので姿勢が悪い人は少ないですよね。
なので体幹のインナーマッスルと姿勢は密接に関係しているのです。
誰にでも簡単にできる体幹トレーニングがあります。
それは呼吸です。
まず、椅子に座った状態で①であげた良い姿勢をします。その状態で鼻から息を吸って口から吐きます。
ポイントは、吐くときにおへその下を凹ますように行います。難しという方は、きついズボンをはくときのお腹を想像してください。前のボタンをとめるときにお腹を凹ましますよね?あのときの感じです。
これを繰り返します。回数はできるだけ多い方が効果はあるのですが、毎日続けられる回数にしましょう。
③ストレッチ
背中が丸くなり、肩が内巻きになってしまうと、胸の前の筋肉が硬くなってしまってます。
ストレッチの方法は、まず部屋の壁のコーナーや柱などを利用し、肘を曲げて、肩の高さまで持ち上げ、手のひらを壁につけます。この時、肘が肩より下がっていると、効果があまり感じられないので、必ず肘は肩の高さまでもっていきます。
そして、手は壁につけたまま、体全体を前の方に体重をかけていきます。胸の筋肉が伸びてる感覚があればOKです。
さらにストレッチをかけたい方は、手を壁につけた状態で挙げている肩とは反対の方に腰を捻ります。これでよりストレッチ効果が得られます。
次は足のストレッチです。
足と肩はどこが関係あるの?と思うかもしれませんが、実はかなり関係あります。
それは太ももの裏の筋肉です。
長時間のデスクワークで、常に膝を曲げた状態だと、膝裏から太ももの裏にある大きな筋肉が、縮こまって硬くなるなってしまいます。しかもこの筋肉は骨盤についています。
なので、この筋肉が硬くなると、骨盤が後ろに倒れるように傾き、結果的に背中が丸くなってしまいまい、不良姿勢になってしまいます。
つまり全身はつながっているということですね。
ストレッチの方法は、まず両足を前に伸ばして座ります。そして、両手でつま先をさわりにいくように上半身を前に倒していきます。
膝をしっかり伸ばしたままするのと、かるく曲げたままするのと両方行うことで、筋肉の伸び方や伸びる部分が変わるので効果的です。
ストレッチをするときはお風呂上りが効果的です。
お風呂につかって全身をしっかり温めることで、筋肉の毛細血管が広がり血流が良くなります。血流が良くなると筋肉が柔らかくなるので、その時にストレッチを行うと効果的です。
まとめ
今回ご紹介した、3つのことを日々行うことで姿勢も改善され肩こりも解消されやすくなります。
是非あなたも取り組んでみてはどうでしょうか?
あと、日常生活の見直し、特にスマートフォンやパソコンの使用頻度も見直しましょう。