慢性疲労症候群とはどんな病気?
慢性疲労症候群とは、筋痛症性脳脊髄とも呼ばれ、1988年に、米国疾病対策センターにより提唱された比較的新しい疾患概念です。
この疾患は、長期間にわたって慢性的な疲労や倦怠感が続く状態です。それに伴って、微熱や頭痛、筋肉痛、リンパ節の腫脹、思考力の低下、睡眠障害、不安などが併発することで、日常生活に支障が出てしまいます。単なる慢性疲労と慢性疲労症候群は全く違う疾患です。この慢性疲労症候群は、精神疾患に合併することが多いです。
疲労感や倦怠感というものは、私たちが日常を過ごしていく中で誰にでも感じるものです。健康であれば、しっかり休息することである程度は回復するものです。慢性疲労症候群では、休息しても疲労感は取れません。しかし、休息しても疲れが取れないというだけで慢性疲労症候群ということではないのです。
どんな症状が出るのか
慢性疲労症候群の主な症状です。
- 活動後の疲労感
- 動けないほどの疲労感
- 立ち上がるだけでも動悸がする
- めまい
- 息切れ
- 筋肉痛・関節痛
- 頭痛
- 喉の痛み
- 睡眠障害
- 思考力低下
- 集中力低下
- 記憶力低下
- 低血圧
- 微熱
- 頚部やわきのリンパ節の腫脹・圧痛
- 筋力低下
- 暑さ寒さに弱い
- 音や光に対して敏感
- 認知機能の障害
- 不安
- 憂うつ
- 意欲がわかない
慢性疲労症候群は、とてつもなくひどい疲労感や倦怠感が起こります。もちろん寝てもしっかり休息しても疲労感は抜けません。
うつ病などの精神疾患との合併が多いので、不安や憂うつ、睡眠障害などの精神的な症状も出てくることが多いです。
なぜ慢性疲労症候群になるのか
原因ははっきりと解明されていません。ですが、ストレスによる自律神経の乱れや、免疫力の低下が原因ではないかと言われています。
慢性疲労症候群の治療法は?
慢性疲労症候群は原因が解明されていないため、治療法が確立されていません。しかし、治療できないということではありません。慢性疲労症候群に効果的な治療をご紹介します。
慢性疲労症候群の治療は、様々な症状が出ます。各症状に対して、それらを緩和することを目的に行います。
- 認知行動療法
- 抗不安薬・抗うつ薬
- ビタミン剤
- 漢方
認知行動療法
不安やうつの症状が強い場合に行います。不安や恐怖に対する間違った思い込みを、認知と行動で変えていくのが認知行動療法です。
認知行動療法によって、今までの自分の考えや感じ方に対して、新しい認識と行動パターンを覚えさせていくことで、不安や憂うつな気分に対してのセルフコントロールしていくことができます。
認知行動療法
①認知行動療法や慢性疲労疾患のことを理解する
まず、自分の病気についての理解や、認知行動療法とはどういった治療法なのかというところを理解していきます。
②自分の状態を客観的に見て理解する
- 不安や発作の頻度・症状
- どういった状況で不安が強くなるのか
- 自分が何に対して不安なのか
ということを理解していきます。
③自律訓練法
自律訓練法(6つの公式)
- 疲労回復
- 血行促進
- 緊張の解消
- 抗ストレス効果
- 集中力アップ
- セルフコントロール力アップ
- 弛緩作用
- 精神の安定
方法
まず、静かな部屋で、リラックスできるBGMを静かに流します。
体を締めつけない服装で、ベルト・眼鏡・時計は外します。
基本姿勢は、仰向けに寝るか、椅子に座るかどちらかです。仰向けの場合は、自分の高さにあった枕を使用します。椅子の場合は、膝の上に手を乗せます。全身の力を抜き、頭を軽く前に倒します。
両腕は指、手首、肘は軽く曲げた状態で体につかないように横に置きます。両足は、軽く開いてつま先が外側を向くようにします。膝の下にクッションを入れても大丈夫です。
全身の力を抜いて、目を閉じます。
そのままの状態で、「気持ちが落ち着いている」と頭の中で繰り返します。自然に気持ちが落ち着いている感覚になることが重要です。気持ちが落ち着いたら次に進みます。
1 重感練習
両腕両足が重たいと感じる練習です。利き腕から始めます。
右利きの場合「気持ちが落ち着いている。右腕が重たい」と頭の中で繰り返します。
意識を右腕の指先から肩に集中させます。重たく感じることが重要です。重たく感じたら同時に反対の腕も重たい感じを感じます。
両腕が重たく感じれたら、「両腕が重たく右足も重たい」と同じように行い「両腕が重たく両足も重たい」と進みます。
2 温感練習
両腕両足が重たく感じたまま、「右腕が温かい」と頭の中で繰り返し、温かいことを感じます。同様に左腕、両足と行います。
3 心臓調整練習
心臓が静かに鼓動している
4 呼吸調整練習
楽に呼吸している
5 腹部温感練習
お腹が温かい
6 額涼感練習
額が心地よく涼しい
このように進めていきます。最初は2番目まででも十分効果があります。
抗不安薬・抗うつ薬
不安や緊張が強い場合は、抗不安薬を使い、うつ症状や意欲低下がある時は、抗うつ薬も使うことがあります。これらの効果により、疲労感の軽減が期待できます。
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
抗不安薬
抗不安薬は、「ベンゾジアゼピン系」といわれるタイプのもので、精神安定剤とも言われます。効果としては、神経伝達物質の一つであるGABAの働きを強めることで、興奮状態の神経を鎮めることができます。抗不安効果の他、寝つきが悪いなどの不眠の症状に対して、睡眠を誘発する効果や、緊張状態によって硬くなっている筋肉や、身体をやわらげる効果もあります。
不安症状が強い場合には、SSRIと併用して服用し、短期間の使用が望ましいとされています。
抗うつ薬(SSRI・SNRI・NaSSA)
抗うつ薬は、セロトニンの分泌を促進させることで、うつ症状を生じにくくさせる効果があります。SSRIは効果が出るのに2週間はかかります。飲んですぐに効果がでるわけではありません。また再発予防のため、1年以上継続することが望ましいとされています。
セロトニンとは、精神的な安定やストレスの抑制に効果があるホルモンです。
ビタミン剤
食事が取れていなかったり、偏食傾向の場合は、ビタミンBやビタミンCを摂取します。ビタミンB・Cは、身体の中で補助酵素として働き、様々な身体の機能をサポートしているので、エネルギーを作り出す代謝においても重要な働きをします。
漢方
漢方は、薬物療法よりも副作用が起こりにくいことがメリットです。
代表的な漢方は「補中益気湯」です。これは幅広く様々な効果が期待できる漢方です。免疫低下や、胃腸の不調、微熱や倦怠感など、慢性疲労症候群の症状にとても効果的だと言われています。
その他の漢方です。
- ストレスの緩和(柴胡加竜骨牡蠣湯・逍遙散)
- 疲労回復(帰脾湯・六君子湯)
- 血流改善(桂枝茯苓丸・冠元顆粒)
漢方は、特定の疾病に対して効果が出るというより、身体の免疫や代謝を上げることによって、疲労や体力などを回復させていくものです。
まとめ
慢性疲労症候群の治療は、いまだ確立されていませんが、認知行動療法や薬物療法など、有効なものはあります。もし、気になる症状があれば医療機関を受診して医師の助言のもと、適切な治療を行うことが、改善への近道です。