人前に出ると、緊張が半端ない。
一度気になると、ずっとそれが気になって生活に支障が出てきた。
不安障害は、人によって症状が違うことが多いので、本人も気づいていないことがあります。
今回は、「不安障害の種類にはどういったものがあるのか」についてご紹介していきますので、是非参考にしてみて下さい。
不安障害とは
不安障害とは、不安感や恐怖感、過度の心配や緊張を主な症状とする精神疾患のことです。ある環境や状況に対して、過剰な不安や恐怖が出ることによって、精神的な苦痛を感じることで、不安や恐怖を感じる状況を避けようとする回避行動により、日常生活に様々な支障をきたすようになる状態を「不安障害」と言います。
不安や恐怖という感情は、、普段の生活の中でも、責任重大の仕事を任された時や、試験前、独立して仕事をしていく時など、不安を感じることはあるのが普通です。これは、脳が「危険である」と認識したときに起こる感情であり、正常な自己防衛反応なのです。
しかし、不安感や恐怖感の度合いが、明らかに過剰であったり、長期間持続することで、心身に影響が出て、日常生活に支障が出ている場合は、不安障害の可能性が高いです。
以前では、この不安障害は「神経症」や「不安神経症」などと言われていました。また最近では、「障害」という文言が偏見につながるという見方もあり、その配慮から「不安症」と言われることもあります。
診断基準
診断基準としては、アメリカ精神医学会の「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、不安障害と診断する際の不安や恐怖の持続期間の目安を「6か月以上」としています。
不安障害の種類
不安障害の種類には以下のものがあります。
- 分離不安障害
- 選択性緘黙症(せんたくせいかんもくしょう)
- 限局性恐怖症
- 広場恐怖症
- パニック障害
- 社会不安障害
- 全般性不安障害
- 強迫性障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
分離不安障害
乳幼児の子供が、母親の姿が見えなくなると追いかけたり、保育園などに預けるときに嫌がって泣くなど、子供は、時間の感覚や記憶が未発達のため、親が自分から離れると不安を覚えるのです。これを「分離不安」と言います。子供の時期の一定の分離不安は自然であり、問題はありません。
しかし、この不安感が過剰になり、精神的な不調や、頭痛、腹痛、吐き気、動悸などの身体的な症状が続き、回避行動をとることで、日常生活に支障が出るものを「分離不安障害」と言います。これは年齢関係なく起こります。
- 特定の人と離れている間、または離れることが予測されることで不安
- 特定の人が病気になったり、事故や災害に合うのではないかと不安
- 特定の人がいない状況、自分一人でいる状況が不安
など、こういった不安によって、外出できなくなったり、そういう状況にならないように回避行動をとるようになってしまいます。
選択性緘黙症(せんたくせいかんもくしょう)
緘黙とは、言語能力があるのにも関わらず、しゃべれない状態です。選択性緘黙症は、場面緘黙症とも言われ、子供の緘黙症に注目されがちですが、大人にも存在します。
選択性緘黙症とは、他の状況では普通に話すことができるのに、ある特定の社会的状況(学校や会社)では、一貫して話すことができなくなる状態です。特定の社会的状況は人によって違い、基本的には、場所・人・活動内容の3つの要素によって決まります。
これによって、
- 仕事の成績が上がらない
- 人間関係が上手くいかない
- 外出できない(引きこもる)
などの日常生活に支障をきたしてしまいます。
限局性恐怖症
限局性恐怖症とは、特定の対象物や状況に対して、過剰な恐怖を感じることで、めまいや吐き気、パニックや失神などの症状が出て、日常生活に支障が出てしまう状態です。
限局性恐怖症には4つのパターンがあります。
- 状況型
- 動物型
- 血液・注射・負傷型
- 自然環境型
- その他
状況型
高所や閉所、暗所などに対して過剰な恐怖を感じてしまうことで、ビルの上の階にある職場に行けない、飛行機やエレベーターに乗れないというように、仕事や日常生活に支障や制限が出てしまいます。
動物型
犬、猫、ヘビなどの動物やクモ、ムカデ、ゴキブリなどの昆虫などの特定の生物に対して過剰な恐怖を感じてしまうことで、日常生活に支障をきたしてしまうものです。
血液・注射・負傷型
血を見ることや、注射に対して過剰な恐怖を感じることで、採血や手術を避けるというものです。血を見ることに恐怖を感じるので、怪我をすることを極度に恐れたりします。
自然環境型
地震や火事、嵐や雷などの自然災害に対して過剰な恐怖を感じます。雷がなりそうな日は怖くて外出できなくなり、雷が鳴り始めると部屋の端で耳に手あてて聞こえないようにする人もいます。
広場恐怖症
広場恐怖症は、逃げ場がない状況や、自分がコントロールできない状況に対して過剰な恐怖を感じる状態です。
この広場恐怖症は、パニック障害と合併することが多いです。パニック障害の発作を経験したことが原因となって、「いつどこで発作が起こるのか不安」という気持ちから広場恐怖症になってしまうことが多いのです。
例えば、電車や飛行機、エレベーター、窓のない部屋、歯医者や美容院など、普通の人では「逃げ場がない」と感じない状況であっても、過剰な恐怖を感じてしまいます。
このようなことによって、できるだけ恐怖を感じる状況からの回避行動をとるようになり、一度回避してしまうと、次に同じ状況に直面するときにはより不安が強くなってしまいます。
こうした悪循環から、徐々に行動範囲が狭くなり、公共機関がつかえなくなったり、外出ができなくなって引きこもってしまうこともあります。
パニック障害
パニック障害の発作は、強い恐怖感が突然、下記の症状とともに現れます。
- 動悸
- 発汗
- 体や手足が震える
- 呼吸困難
- 胸の圧迫感・不快感
- 吐き気
- 腹痛
- めまい・ふらつき
- 自分自身ではないような感覚
- 気が狂う恐怖に襲われる
- 寒気・ほてり感
このような症状が出ます。
こういった発作は10〜30分ほどで落ち着きますが、一度パニックを起こすと、また同じ場所や同じ状況になると再びパニックを起こすのではないか、という「予期不安」に襲われ、外に出るのが怖くなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。
パニック障害の発作の頻度としては、1日に数回起こることもあれば、1ヵ月に1回起こるか起こらないかという人もいます。
社会不安障害
社会不安障害は、人からの注目や人と接することへの不安や緊張が過度となり、心身や日常生活に様々な支障をきたすものです。社会不安障害の発症の好発年齢は10代ですが、多くは5~35歳で発症します。
日常的に経験する、「大勢の人の前で話すのが緊張する」「初対面の人だと緊張したり恥ずかしいと思う」など、こういった日常的な場面での不安感が強く出てしまいます。これは誰にでも起こることであり、人前で全く緊張しないという人はめったにいません。しかし、この不安感や緊張があまりにも過剰な場合は、社会不安障害の可能性があります。
具体的に緊張する場面になると、
- 手が震える
- 頭が真っ白になる
- 大量の汗が出る
- 声が震えたりひっくり返ったりする
というような症状が出ます。
一般的に「あがり症」「赤面症」「対人恐怖症」「場面恐怖症」と言われることもあります。
そして、こういった状況で苦手意識が強くなり、この状況から避げがちになってしまうと、ますます同じ状況での不安感が強くなってしまうのです。そういった悪循環の結果「仕事や学校に行けない」ということになってしまうのです。
全般性不安障害
全般性不安障害は、日常生活の中での様々な状況に対して過剰な不安や心配を感じます。
まだ来てもいない未来の出来事に対して、過剰に不安感を感じてしまいます。これらの過剰な不安や心配は、作業効率的の低下につながり、本人もそれには気づいているのですが、自分自身でこの不安な気持ちを制御することが難しい障害です。
- 仕事で失敗をしないか不安
- 人に嫌われないか不安
- 周囲の期待にこたえられるか不安
- 時間通りに行動できるか不安
といった症状が出ます。
この全般性不安障害は、
- 自己懐疑的
- 自意識過剰
- 完壁主義
- 周囲からの批判に敏感
- 安心感を求めている
- 傷つきやすい
といった特徴があり、いろんな不安から身を守るために、常に防御的で緊張しているため、頭痛、発汗、めまい、腹痛などの体の症状を訴えることがあります。
強迫性障害
ある考えや、イメージが何度も浮かんできて、同じことを繰り返す状態です。誰でも経験があるのは、鍵をちゃんとかけたのか心配になり、戻って確認するというような行為です。これだけでは強迫性障害にはなりませんが、これが過剰になって、日常生活や精神状態に影響する状態を強迫性障害と言います。
例えば、手が汚れているのではないかと思うことで、何度も手を洗います。これは「手が汚れている」という強迫観念によって、「何度も手を洗う」という強迫行為が結びついています。自分でも分かっているのですが、止められないのです。その結果、外に出ると手が汚れてしまうのではないかと思うようになり、外出できなくなってしまうこともあります。
強迫観念→不安→強迫行為→一時的な安心→強迫観念→不安→強迫行為→
というような流れが繰り返されます。
強迫観念が一度頭に浮かぶと、それにとらわれてしまい、強い不安が起こります。そして、その不安を解消するために、強迫行為をします。強迫行為をすることで、不安は解消され一時的に楽になりますが、再び強迫観念による不安がでてくると、以前よりもさらに強迫行為をせずにはいられなくなってしまうのです。
このサイクルが、何度もくり返されることで、悪循環に陥ってしまうのです。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
生死に関わるような危険な体験をしたり、その現場を目撃することで、強いショックを受けます。そしてそれが「トラウマ」と言われる心の傷になって残ることで発症するストレス障害を心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言います。
このPTSDは、トラウマとなっていることが、時間が経っても
何度も、その体験が思い出され、また、その時感じた恐怖と同様な恐怖を感じ続けるので、日常生活にも支障が出ます。
自然災害
地震・火事・津波・洪水・台風など
社会的不安
戦争・テロなど
生死に関わる体験
事故・犯罪・虐待・性的暴行など
喪失体験
家族や友人との死別・大切なものの喪失など
まとめ
いかがでしたでしょうか?不安障害にもたくさんの種類があります。人間は生きている中で、不安や恐怖、心配や緊張といった感情は誰にしも感じるものです。しかし、その状況での感じ方や受け止め方は、人によって違います。同じ状況でも不安を抱く度合いが人によって違うということです。もしあなたが不安障害かもしれないと思ったら、どの種類に当てはまるのか分かっておいた方が良いです。
こういった精神的な障害は自律神経が影響しますので、不安障害でお困りであれば、当院に一度ご相談下さい。何かのお役に立てることと思います。