人工授精を勧められたけど人工授精はどういう方法なの?
と思っているあなた。
今回は人工授精について説明していきます。
妊娠とは
まずは、妊娠までの流れを説明します。
排卵→受精→着床(妊娠)
このような流れで妊娠は起こります。
排卵
卵子は子宮の両側にある2つの卵巣の中で、卵胞という殻に包まれた状態で成熟していきます。そして卵胞が18~22mmの大きさになると、卵胞の殻が破れその中から、卵子が卵巣の外へと放出されます。これが排卵です。
その後卵子は卵管へと送られます。この排卵は、生理が終わって1週間後くらいに起こります。
受精
性行為によって膣内に射精された精子は、子宮頸管(子宮の入り口)から子宮内へ侵入していきます。1回の射精での精子の数は1億~4億と言われており、そのうち99%が子宮の前で死んでしまいます。
子宮内に入り、卵管内にたどり着ける精子は数百個となります。その中の最終的に選ばれた1つの精子が卵子と結合します。これが受精です。つまり卵管は生命誕生の場所なのです。この受精した卵子を受精卵と言います。
着床
受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら7~10日ほどの時間をかけて、卵管から子宮内へと移動していき、子宮内膜に付着します。これが着床です。妊娠の成立となります。
この後受精卵は、さらに細胞分裂を繰り返しながら赤ちゃんへと成長していきます。
不妊症とは
「不妊症」とは、避妊をしないで夫婦の性生活を送っているにもかかわらず、1年たっても妊娠しないものをいいます。
健康な男女が、その性周期に合わせて性行為を行った場合、妊娠する確率は約25%といわれています。
一般的には、避妊せず通常の夫婦の性生活を送っていれば、だいたい結婚して半年で7割、1年で9割、2年で10割が妊娠するといわれています。
不妊症の原因
不妊の原因は様々で、女性側、男性側、あるいはその両方の場合がありますが、何も原因がない場合もあります。
WHO(世界保健機関)が発表した不妊症原因の統計では、40%が女性側、25%が男性側、25%が女性男性両方、10%が原因不明となっています。
女性の原因
- 排卵障害
排卵がなければ卵子が排出されないので、妊娠は起こりません。
- 卵管障害
卵管の詰まりや、癒着、炎症によって妊娠できにくいものです。
- 子宮障害
受精卵が子宮内膜に着床できないことによって不妊の原因となります。
- 頸管障害
子宮頸管の粘液の分泌量が少なくなったり、精子が通るのに適していないと、妊娠が起きにくくなります。
- 免疫障害
免疫異常によって「抗精子抗体」という抗体が、精子を攻撃してしまうことで不妊の原因になります。
- 原因不明
原因不明不妊は約10%と言われています。
男性の原因
- 乏精子症
- 無精子症
- 精子無力症
- 精索静脈瘤
- 無精液症
- 先天性精管欠損
- 勃起障害(ED)
不妊症の治療法
不妊症の代表的な治療法です。
- タイミング法・排卵誘発法
- 人工授精
- 体外受精・顕微授精
などがあります。
この中で今回は人工授精について詳しく説明していきます。
人工授精
人工授精とは、採取した精液の中から、元気な精子を排卵のタイミングで子宮内に注入する方法です。これは、受精が行われる卵管まで到達する精子の数を増やして妊娠の確率を上げます。
一般的には、タイミング法の次の段階で行われる方法です。
人工授精と聞くと「人工的に作る赤ちゃん」とイメージする人もいるかと思いますが、子宮からは精子が卵管内まで自分の力で移動し、卵子と出会って受精するので、かなり自然妊娠に近いかたちです。
分類
人工授精は、精子の提供者によって2種類に分けられます。
配偶者間人工授精 (AIH)
配偶者が提供した精子を利用するもので、受精能力を持った精子がある程度作られていれば、それを使って人工授精を行うことができます。これは、法律上婚姻している男女間で行われるため、人工授精を表すAIの後に「Husband(夫)」のHを付けた「AIH」という名前で呼ばれています。
非配偶者間人工授精 (AID)
第三者が提供した精子を利用するものです。
日本では非配偶者間人工授精は、1948年に慶應大学病院で始まり、これまでに1万人以上の子供が生まれたと言われています。
不妊治療の検査の結果、男性が精子を作る能力のない無精子症や、精子の運動性が低下した精子無力症、正常な妊娠は不可能と判断される精子死滅症、無精液症と診断された場合に受けられる治療法です。
精子は、配偶者とは関係のない第三者が提供した精子を受精させて子供を作るため、AIの後に「Donor(提供者)」のDが付いた「AID」と呼ばれます。
人工授精の適応
- 乏精子症や精子無力症など精子に問題がある場合
- タイミング法で妊娠しなかった
- EDで性交渉ができない
- 子宮頸管障害により精子が頸管を通過できない
- 免疫不全の抗精子抗体が陽性
- 不妊の原因が不明
などがあります。
基準になるものは、正常精液所見(WHOの基準)が一般的に使用されます。
- 精液量 1.5ml以上
- PH 7.2以上
- 精子濃度 1ml中に1500万個以上
- 精子運動率 運動精子が40%以上、前進運動精子が32%以上
- 正常形態精子 4%以上
- 生存率 58%以上
- 白血球 1mlに100万個未満
これらが基準になることが多いです。
また、フーナーテスト陽性で、精子と頸管粘液の相性が良くない場合や、出張が多く性交渉の機会をなかなかもつことができない夫婦も対象となります。
いずれの場合も、卵管障害がないことが前提です。卵管障害があると卵管が狭窄したり癒着してたりするので、卵子と精子が出会うことができません。なんとか出会って受精したとしても、その受精卵が子宮まで行けなくなるので妊娠できません。
・フーナーテストとは、排卵前の頸管粘液が出ている時期に性行為を行ってもらい、その粘液の中に精子がどれくらいいるのか調べるテストです。精子がいても元気でなければ卵管までたどり着けないので動きの状態も検査します。
人工授精の方法・流れ
①人工授精の日程の決定(排卵日の予測)
a. 排卵時期を正確に特定するために、超音波検査で卵胞の大きさや子宮内膜の厚みを調べます。そして、血液検査でエストロゲンというホルモンの量を測定し、排卵日を予測していきます。
・エストロゲンとは、卵胞ホルモンとも呼ばれており、妊娠に密接に関係する女性ホルモンの一つです。エストロゲンは周期的に分泌されるホルモンで、排卵直前にピークになります。
b. 排卵誘発剤を使用するかしないかを決めます。排卵誘発剤を使用した場合は排卵日を特定しやすくなります。
c. 排卵日が特定できたら、人工授精日を決定します。
人工授精は排卵から24時間以内に行うのが最適な方法だと言われています。
②精液採取
当日の精液の採取法を決めます。
- 自宅で採取したものを病院に持参する方法
- 病院で採取する方法
があるので夫婦で話し合って決めます。
精液採取の際には、指定された容器に入れて病院に提出します。ただ、精子は低い温度では死んでしまうので、病院で精子の採取を行うのが良い方法とされています。病院には「採精室」という個室があるので、その部屋で精液を採取します。
③精液の洗浄・濃縮
精液を採取する過程で、雑菌やほこり、服の繊維などが混入してしまうので、採取した精液をそのまま子宮内に注入することはしません。そのまま注入すると、子宮内膜炎や卵管炎、腹膜炎などの炎症や感染の原因になったり、そもそもこの方法では妊娠の確率が極めて低いのです。そのため、精液の洗浄と濃縮が必要となります。
採取した精液を遠心処理をすることで、それによって残ったものが運動率の良い精子になります。これを使用します。
かつては精液をそのまま子宮に注入するといった簡単なやり方をしていましたが、現在ではこの方法を実施している施設は少なくなりました。
④注入
子宮内に管を入れるか、もしくはプラスチックの注射器から、洗浄・濃縮した精液を注入します。痛みはほぼありません。その後少し安静にしてから終了です。
帰宅後は、特に禁止されていることはないので、運動も性行為も行って大丈夫です。
⑤排卵チェック
人工授精の2~3日後に、排卵が起きたか確認をします。
基礎体温の計測は自分でも確認ができます。排卵が起きると、ホルモンの影響で基礎体温は排卵前に比較して高くなります。
血液検査では、プロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンの分泌量が増えるので血液検査で確認します。また超音波検査でも確認できます。
黄体に何らかの障害がありプロゲステロンがしっかり分泌されないと、子宮内膜が受精卵を受け入れる状態になりません。
・プロゲステロンとは、子宮内の状態を整えて着床しやすい環境を作り、妊娠を維持しやすく働いてくれます。
なのでプロゲステロンの分泌が少ないと内服薬や直接プロゲステロンを注射して補充する場合もあります。
⑥妊娠確定
妊娠は、人工授精の後の生理予定日で判断します。予定日を大幅に過ぎても生理が来ない場合は妊娠検査薬などでチェックしたり、血液検査でも妊娠の判定ができます。また、体温で判断することも可能です。人工授精から3週間以上基礎体温が高い時期が続くと、妊娠している可能性があります。
妊娠確率
人工授精による妊娠の確率は、病院や施設によって異なりますし、体の状態によってもことなります。年齢を重ねれば重ねるほど確率は低下していきます。
確率の目安としては、
- 20代で約10~20%
- 30代で約5~10%
- 40代で約1~5%
となり、20代と40代ではかなり差が出てきます。なので不妊治療を行うに当たっては、早期の治療が重要になってきます。
人工授精の費用
自費診療のため保険が適用されません。なので病院によってばらつきがあります。人工授精の一回当たりの費用は、約1~3万円となります。排卵誘発剤の使用の有無や、検査の回数などで異なってきます。
まとめ
いかかでしたでしょうか?
今回は人工授精についてまとめてみました。人工授精は自然妊娠に近いかたちですので、人工授精に対するイメージが変わった人もいるのではないでしょうか。
子供が欲しいと思っている夫婦は、人工授精に限らず、不妊治療自体を早期に開始した方が妊娠の確率は高くなります。なかなか子供ができなくてどうしようか迷っているのであれば、今すぐ病院を受診してみてもいいかもしれません。
自分の子供と早く会いたいですね。