腰部脊柱管狭窄症とは?原因~症状~治療

歩くとだんだん足が痛くなって歩けない。

座るとまた歩けるのだけど・・・

しかも、最近はおしっこが出にくい。

ということはありませんか?

もしそうなのであれば「腰部脊柱管狭窄症」かもしれません。

背骨の真ん中には「脊柱管」という脊髄神経の通る管があり、首から腰まで繋がっています。

脊柱管狭窄症とは、その脊柱管が狭くなることにより、神経が圧迫され、神経の血流が低下して症状が出るものを脊柱管狭窄症といいます。

この疾患は60歳代以降に好発します。

脊柱管狭窄症には、圧迫される部位によって3つのタイプに分けられます。

①神経根型

脊髄神経から左右に枝分かれした神経の根本が圧迫された状態です。症状は左右のどちらかの脚に出ます。

②馬尾型

脊柱管を通る脊髄神経の先端部は、細い神経が束になっていて、この部分を馬尾神経といいます。脊柱管が狭くなり馬尾神経が圧迫された状態です。両方の脚に症状が出ます。

③混合型

神経根型と馬尾型のミックスした状態です。

に分けられます。

原因

脊柱管狭窄症の原因は、加齢により脊椎周囲の組織が変性を起こし最終的に脊柱管がせまくなる事です。

①靭帯

脊柱管の後方には、黄色靭帯(おうしょくじんたい)という脊柱を支える靭帯が存在しています。この靭帯が加齢変性により、硬く肥厚して神経を圧迫します。

②椎間関節

脊椎と脊椎を繋いでいる関節を、椎間関節といいます。この関節が加齢や繰り返す負担により、変形したり肥厚して神経を圧迫します。

③椎間板

椎間板も加齢変性により損傷が生じ始め、損傷部分からクッション成分の源である、髄核(ずいかく)というものが飛び出して神経を圧迫します。

④腰椎すべり症

腰椎すべり症とは、腰の背骨と背骨の連結が崩れてしまい、前方にずれてすべってしまっている状態です。

この背骨のズレによって、脊柱管が狭くなり神経を圧迫してしまいます。

さらにすべり症の人は、脊柱管狭窄症になるリスクが2倍になるというデータもあります。

すべり症になる原因は、中学生~高校生の若い年代で野球などの繰り返し腰を捻る動きをする事で、腰椎が疲労骨折し分離してしまう「腰椎分離症」から発生する事が多いです。

将来的に脊柱管狭窄症を発症させないためにも、腰椎分離症はしっかりと治療する事が重要です。

症状

脊柱管狭窄症の症状は、

  • 間欠性跛行
  • お尻から足にかけての痛み
  • 脚のしびれや感覚障害
  • 腰の痛み
  • 頻尿、残尿、失禁などの排尿排便障害
  • 脚の脱力感

など腰以外の症状も出てきます。

また特徴として、座っている時はあまり症状は出ません。

次に、脊柱管狭窄症の前兆かも?と思われるものをあげてみます。

  1. 長時間歩いているといると、脚の痛みやしびれが出てくる。
  2. 正座したわけでもないのに、脚がしびれる。
  3. 前かがみになると痛みやしびれは楽になる。
  4. なんか足がだるくて重い。
  5. いすから立ち上がるとき、腰や脚に痛みが出る。
  6. 少しの段差、または段差のないところでつまずくことが多くなる。
  7. お尻の周りに痛みやしびれがある。
  8. 両足の裏がしびれている。
  9. 両脚に痛みやしびれがある。
  10. 歩くと尿が出そうになる。

などがあげられます。

脊柱管狭窄症には、「間欠性跛行」(かんけつせいはこう)という特徴的な症状が出ます。

間欠性跛行とは

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間欠性跛行とは、ある程度の時間、歩いたり立っていたりすると、脚に痛みやしびれが出ます。そして、歩き続けたり、立ち続けることがつらくなるのです。

その時に、しゃがみ込んだり、椅子などに座ったりして休めば、痛みやしびれが消え、また歩いたり立ったりできるようになります。

これが、脊柱管狭窄症の最も特徴的な症状である、間欠性跛行です。この病気にかかった人の多くが悩まされる症状です。

脊柱管狭窄症が悪化してくると、50mも歩かないうちに、痛みやしびれが出てきてしまう人もいれば、5分間立っているだけでつらくなる人もいます。間欠性跛行が出たときは、まず休むことが大切です。

立ったり歩いたりしていることで腰を伸ばしているため、狭まっていた脊柱管がよけいに狭まり、それが神経を圧迫し、痛みやしびれが出てしまうのです。
座ったりしゃがみ込んだりと腰を曲げることで、腰椎の構造的に狭まっていた脊柱管が広がり、神経の圧迫を和らげることができます。

また、間欠性跛行を避けるために、歩くときや立っているとき、杖やシルバーカートを使うと、腰にかかる負担を軽減できます歩くのが楽になると思います。

この間欠性跛行ですが、実はこれが起こるのは脊柱管狭窄症だけではないのです。これ以外にも起こる原因があるのです。

それは、

「バージャー病」「閉塞性動脈硬化症」という病気です。

この中でも脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症との見分けるのが重要になります。

バージャー病

難病指定されている疾患で、20~40歳の煙草を吸う男性に多く(男女比10対1)、手足の動脈の病気です。

閉塞性血栓血管炎ともよばれ、動脈が炎症を起こし、血流障害によって放っておくと手足が壊死してしまうこともあります。

このバージャー病は、症状や年齢層、喫煙歴などから比較的簡単に見分けられます。

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化が原因で、上肢や下肢(主に下肢)の血管が狭くなり、血流障害を来すものです。

主に50~60歳以降の男性に多く発症します。

糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などの動脈硬化の危険因子をもっている人がなりやすいです。近年では、食生活やライフスタイルの欧米化により、動脈硬化を基盤とする、閉塞性動脈硬化症が急速に増えています。

閉塞性動脈硬化症からくる間欠性跛行の場合、血管が細くなったり詰まったりして血流が滞り、下半身の筋肉への酸素供給などの血液循環が上手くいかなために痛みが起こっています。

運動することによって筋肉が必要とする酸素量が増えるため、本来ならば血液循環を早めてより多くの酸素を供給しなければならないのに、詰まりによってそれが阻害されることが原因です。

つまり、脊柱管狭窄症は神経由来で、閉塞性動脈硬化症は血管由来となります。

この2つは同じように、ある程度の時間、歩いていたり立っていると、脚に痛みやしびれが出ます。

脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症の見分け方

歩行負荷試験

歩行時に現れた症状が、前屈姿勢をとることによって改善されるかどうかを見る試験です。

改善されるなら脊柱管狭窄症(神経由来)による間欠性跛行であると考えられます。閉塞性動脈硬化症(血管由来)では姿勢の変化による症状の軽減や消失は見られません。

立位負荷試験

脊柱管狭窄症は、立っているだけで症状がひどくなりますが、閉塞性動脈硬化症では、立っているだけなら変化は見られないことから見分けます。

自転車テスト

脊柱管狭窄症の場合には、いくら自転車をこいでも症状は現れません。

動脈の触知

足背動脈や後脛骨動脈の脈をみます。閉塞性動脈硬化症では脈が減弱し脊柱管狭窄症では正常となります。

治療法

治療法には大きく分けて2つあります。

手術をしない保存療法と、手術療法です。

保存療法

姿勢が反り腰になり狭窄を増強している場合は、骨盤は前に傾いているので後ろに傾けるように治療していきます。

この場合は、

・腹筋群と殿筋群の強化

・股関節の前面の筋肉と背中の筋肉を緩める

を中心に治療します。

そうすることで、骨盤はニュートラルの位置に戻り、狭窄が軽減されます。

しかし、根本的な原因が黄色靭帯の肥厚や椎間板の膨隆なので、あくまで二次障害の予防が目的になります。

薬物治療では、消炎鎮痛剤(痛み止め)や血流改善作用のある薬剤、筋弛緩薬などを、患者さんの重症度に応じて処方します。

その他、ブロック注射などで痛みを和らげる方法もあります。

手術療法

脊柱管狭窄症の診断を受け、すぐに手術適応となる患者さんは基本的にいません。基本的にまずは薬剤や注射、リハビリなどの保存治療を行います。

その中で、

  • 日常生活に支障をきたしているとき(就業中の人は、仕事に支障をきたしているとき)
  • 保存治療を行っても無効なとき

このようなときは手術の適応になります。

手術法は何種類かあり、代表的な術式を紹介していきます。

①拡大開窓術

腰部脊柱管狭窄症の代表的な除圧術である拡大開窓術は、神経を圧迫している椎骨の一部と、肥厚した靭帯を後方から取り除く手術です。神経が圧迫されている部分が1か所の場合にかかる時間は、約1時間です。

内視鏡下腰椎椎体間固定術(ME-PLIF/TLIF)

ME-PLIFは、内視鏡とレントゲン透視装置を使用した固定術と言われる手術です。

全身麻酔後に、背部に18mm程の皮膚切開し、内視鏡の管を通します。変性した椎間板を取り除き、そこに腰骨から採取した骨を詰めたケージと言われる人工物を収め、脊椎を整形します。

その後、上下に2箇所ずつ切開し、4本のスクリューと2本のロッドを挿入し、椎骨を固定します。

主に、腰椎すべり症など不安定性を伴う場合には、この手術が適応されます。

 内視鏡下腰椎側方椎体間固定術(XLIF)

XLIFは、内視鏡とレントゲン透視装置を使用した固定術と言われる手術です。

ME-PLIFと異なる点は、ME-PLIFは背中側から内視鏡を挿入しますが、XLIFは身体の側方向から挿入します。これにより、背中側の筋肉を痛めないなどのメリットがある手術です。

④前方侵入椎体固定術(OLIF)

脊柱管狭窄症の術式は多数ありますが、そのほとんどが筋肉の多い背中側からアプローチするものです。このような「後方アプローチ」では、背骨から周囲の筋肉を剥離するので、筋肉の少ない前方の「前方アプローチ」に比べ、体への負担が大きくなるというデメリットもあります。

この手術では、腹部側から骨を固定するケージを挿入するため、背中側にある靭帯を除去する必要も、骨を削る必要もありません。また、腹部につくる傷は一か所3~4cmほどと小さいことも、この術式のメリットです。

⑤内視鏡下脊柱管拡大術(MEL)

1.5〜2cm程度の皮膚切開ののち、直径12~18mmの円筒型の手術器具を体内に挿入し、先端についているカメラから映し出される体内のようすをモニターで観察しながら、椎弓を切除し、肥厚した黄色靭帯を切除することにより、神経の圧迫を取り除きます。

皮膚を切開する範囲が2cm程度ですみ、出血量も少ないのが、この手術法の利点です。手術時間は30分ほどです。

このような手術があります。

すべての術式にはメリットとデメリットがあります。

しかし、手術成績はほぼ同様ですから、担当医が最も習熟している方法で行ってもらうのが、最良だといえるでしょう。

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