指が腫れている。
最近、指が曲がってきたような気がする。
それはへバーデン結節かもしれません。
「手」は5本の指を動かして様々な動作を行っています。
その手の指の関節が腫れてきて、痛みが出る疾患はいくつかありますが、今回は「へバーデン結節」について、特にへバーデン結節とは何か?へバーデン結節の原因は何か?というところをご紹介していきますので、是非参考にしてみて下さい。
手の解剖
へバーデン結節を理解して頂く前に、まずは手の解剖を簡単に説明します。
手には27個の骨があります。手首側には、8個の小石のような骨があります。これは手根骨という骨で、名前の通り、手の根本にある骨です。指には、19本の細長い骨があります。指先の骨から、末節骨、中節骨、基節骨、中手骨という骨です。親指は短いので中節骨がありません。
指の関節の呼び方は、
・DIP関節・・末節骨と中節骨(第一関節)
・PIP関節・・中節骨と基節骨(第二関節)
・MP関節・・基節骨と中手骨
と言います。
この指の骨と8個の手根骨、27個の骨が、それぞれ隣接する骨と靭帯によって構成され、手首の動きと連動して、パソコンをしたり、料理をしたりと、たくさんの細かい動きができるようになっているのです。
へバーデン結節とは
へバーデン結節が発症する部位は、DIP関節です。先ほど手の解剖で説明した、末節骨と中節骨の関節(第一関節)です。このDIP関節が変形し、腫れや痛みを引き起こすものを、へバーデン結節と言います。
へバーデン結節は、40代以降の女性に多く発症する、変形性関節症です。人差し指から小指の4指の間での発症が多く、まれに、母指にも発症します。へバーデン結節は、特に人差し指が多く、両手の関節に、複数同時に非対称に発症することが多いです。
へバーデン結節の症状
へバーデン結節の主な症状は3つ。
- 痛み
- 腫れ
- 変形
具体的な症状は、
・DIP関節が太くなり、結節状に変形している
・赤く腫れている
・押さえると痛い
・じっとしてても痛い
・グーパーがやりづらい
・物をつかんだりすると痛い
・指先を使う動きが痛い、やりづらい
・関節が曲がった状態で固まる
などがあり、へバーデン結節は日常生活に支障をきたしてきます。
変形の度合いは、軽度のものから重度のものまで人によって様々です。重度のものは、関節の脱臼を伴います。
へバーデン結節のレントゲン所見
へバーデン結節のレントゲン所見の特徴です。へバーデン結節では関節の隙間が、他の関節に比べて狭くなっている関節裂隙の狭小化や、骨棘(こつきょく)と言われる骨のトゲの形成、末節骨と中節骨の関節面が白く硬くなる骨硬化像などの、変形性関節症特有の所見が認められます。へバーデン結節に似たような所見が見られる疾患もあるので、鑑別が大切です。
へバーデン結節の原因は?
一般的にはへバーデン結節の原因は不明と言われています。その中でも、「これがへバーデン結節の原因になっているのではないか?」と言われているものがあります。その原因になっている可能性の高いものを紹介していきます。
使いすぎ
指の使い過ぎはへバーデン結節の原因になりやすいと言われています。同じ動作の繰り返しや、重たい物を持ったりなど、手や指を酷使する仕事をしている人はへバーデン結節に対しては要注意です。
例えば、裁縫の仕事や料理人、引越しなど重たい物を持つ仕事や、主婦の方は、掃除・洗濯・洗い物など手をよく使うことが多いです。また、ピアノやバイオリン、ギターを長年にわたって弾いている音楽家の方、美容師の方や、パソコンを頻繁に使用している方も、指をよく使っていますので、へバーデン結節の原因になりやすいと言われています。これ以外にも、手や指を繰り返し使う仕事はたくさんあります。このような方は、指への負担がかかりやすく、へバーデン結節になりやすいとされています。
加齢
加齢もへバーデン結節の原因になります。
加齢によって軟骨が磨り減り、関節の隙間が狭くなります。関節のスムーズな動きも阻害されて、硬くなり、関節へかかる衝撃吸収機能が低下してしまいます。関節面への負担が増大することが原因となり炎症が起こりやすくなります。しかも、指は日常的によく使われる場所なので、へバーデン結節になる可能性が高くなってしまいます。
変形性膝関節症をご存知でしょうか?数年前から、健康番組や雑誌でも取り上げられることが多くなった変形性関節症の疾患です。一般的に変形性関節症というと、膝のイメージがあるかと思いますが、あれと同じような病態です。加齢によって軟骨が磨り減り、関節の隙間が狭くなって、硬くなることが原因で、関節への負担がかかって腫れや痛みが出るのです。へバーデン結節ではそれが、指のDIP関節で起きているということです。
姿勢や筋肉のバランスの乱れ
姿勢や筋肉のバランスの乱れもへバーデン結節の原因の一つと考えられています。骨盤の歪み、背骨の歪み、その人の癖などで、姿勢は変化します。すると、筋肉の左右差や、硬さなどのバランスが崩れてしまいます。そういったことが原因で、手や指に負担がかかってしまうのです。簡単に言うと、全身は筋肉の膜でつながっているということです。それを分かりやすくお伝えしますね。
手以外の部分で筋肉の硬さがあったとしましょう。長袖のシャツを着ている仮定で、シャツの肩の所をつまんで上に引っ張ってみてください。そうすると、手の袖の部分が上に引っ張られますよね?これは、肩の筋肉が硬くなると指先にまで影響が出るということです。
症状が指先に出ていても、原因は、痛みのあるところとは別のところにある可能性もあるということです。それが、肩なのか、骨盤なのか、内臓なのか、原因はどこかに隠れているのが臨床的な見解です。
体を上手に使えていない
へバーデン結節の原因に、体の使い方が上手にできていない方があります。どういうことかと言いますと、手先だけで作業をしている方です。パソコンの仕事や、美容師などの作業をする場合は仕方ないですが、引越しなど重たい物を持ったり、手でつかんで動かす作業の場合は、手先だけで行っていると、負担が増大してへバーデン結節の原因になってしまいます。手先だけでなく体全体を使って作業をしている方の方が、動きの効率が良く、指への負担が軽減されるのです。
例えば、床に置いてある重たい荷物を持ち上げる時に、立ったまま前かがみで持ち上げると、手にはかなりの負担がかかります。これを、一度しゃがんで荷物を自分に近いところで持つと、手への負担は少し軽減されるのです。これが、体全体で作業するという事です。なんとなくイメージはできますか?
このように、体の使い方ひとつで手や指への負担は変わってくるので、手先で作業をしている方は、へバーデン結節の原因になりやすくなるのです。
遺伝的要因
へバーデン結節は遺伝的な要因があると考えられています。そのため、両親や身内にへバーデン結節の人がいる方は、なりやすいという報告もあります。特に、今まで指をほとんど使ったことがない方や、仕事で指を使っていないのに、へバーデン結節になる方は遺伝的な要因の可能性も考えられます。一度、両親や身内の方に聞いてみてはどうでしょうか?
ホルモンバランスの影響
ホルモンバランスもへバーデン結節の原因と考えられています。
40代以降の女性に多いという事は、女性ホルモンの影響が原因の可能性が高いのです。
女性は生まれてから思春期になると初経をむかえて、その後は毎月の生理、妊娠、出産、授乳、やがて閉経を迎えます。これは女性ホルモンの働きにより起こるものです。
女性ホルモンとは、プロゲステロンとエストロゲンという2つのホルモンに分けられます。
プロゲステロン
プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、妊娠に備えて子宮の状態を整えたり、体にエネルギーをため込んだり皮脂を分泌したりする働きがあります。生理がはじまって約2週間たつと、からだの中では排卵が起こります。この時に増えるホルモンがプロゲステロンです。
プロゲステロンは、子宮内膜をやわらかくして、妊娠の準備を整えます。妊娠が起これば、分泌はそのまま続き、出産まで子宮内膜を維持しますが、妊娠が起こらなかった場合、分泌量は約2週間で減少していき、子宮内膜が剥がれ落ちます。これが生理です。
エストロゲン
エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれ、女性らしい体形にするホルモンです。また、排卵の準備をする、髪や肌の潤いを保ち、シミやシワを防ぐ働きがあります。さらに、丈夫な骨を維持したり、コレステロール値の調整をしたり、動脈硬化を防ぐなど、様々な働きがあります。
このように2種類の女性ホルモンがバランスを取りながら体内で作用しているのです。
さらに、エストロゲンは、骨や関節にも影響を与えています。コラーゲンは、関節の表面を覆っている軟骨を構成するタンパク質で、これによって私たちの関節はスムーズに動くようになっているのです。そして、このコラーゲンの生成には、エストロゲンが関わっているのです。
更年期を迎える50歳前後くらいから、エストロゲンの分泌が減りはじめ、女性ホルモンのバランスが崩れてきます。エストロゲンの減少が原因となって、関節に影響を及ぼし、それがDIP関節に発症してきたものが、へバーデン結節ということです。
へバーデン結節とリウマチとの違い
指の関節が腫れる疾患として代表的なものが、リウマチです。へバーデン結節とリウマチどちらも、40代以降の女性に多い疾患です。
リウマチとは
リウマチは、自己免疫疾患のひとつで、人間の身体には、免疫というものが備わっています。体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を攻撃して退治してくれます。この免疫機能が正常に機能しなることが原因で、自分の体の細胞を異物と認識してしまい、関節の軟骨を攻撃してしまうのです。リウマチも、指の関節に結節状の腫れがみられ、リウマトイド結節と呼びます。へバーデン結節と同じように腫れや痛みが出てくる疾患です。
へバーデン結節とリウマチの違いは、
関節の部位
へバーデン結節は、DIP関節(第一関節)に発症し、リウマチは、PIP関節(第二関節)に発症します。
リウマチに関しては、PIP関節に限らず、手や足膝などの、全身の関節に、腫れや痛みなどの症状が出るのが特徴です。
朝のこわばり
へバーデン結節は朝起きた時の手のこわばりはほとんどみられませんが、リウマチは朝の手のこわばりが複数の関節にみられます。
血液検査
リウマチでは、リウマチ因子陽性、抗CCP抗体陽性となります。へバーデン結節ではこのような血液検査の所見は認められません。
まとめ
いかかでしたでしょうか?
へバーデン結節の原因は基本的には分かっていませんが、原因の可能性と考えられているものをご紹介しました。私たちは日常的に手や指を多用します。その指が痛くなることで、生活に不自由を感じてしまいます。へバーデン結節というあまり聞きなれない疾患ですが、このような疾患があるということ、原因が何なのか?は理解しておいてください。指の小さな関節でも大切ですね。
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