しびれや麻痺などが見られない、緊急性がない脊柱管狭窄症には、まず保存治療が行われます。保存治療を大まかに分けると、痛み止めの薬を使った薬物療法、神経ブロック療法、運動療法、物理療法、装具療法、代替療法の6種類。どの治療法も、基本的には痛みを和らげることを目的としたものです。
脊柱管狭窄症を改善する際に注意したいことは、痛みの強さと、脊柱管狭窄症の進行度が比例していない点。自然治癒の可能性があるかどうかを判断するために、まず保存治療が行われると言えます。
薬物によって痛みを抑える薬物治療法
脊柱管狭窄症で手術以外で幅広く行われているのが、薬物によって痛みを抑える治療です。
日本腰痛学会の腰痛診療ガイドラインでは、脊柱管狭窄症急性期の場合、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、筋弛緩薬が推奨されています。
『腰痛の治療に安静は必要か』公益財団法人日本医療機能評価機構
そして、脊柱管狭窄症慢性期では上記に抗不安剤や抗うつ剤、オピオイドが加わります。
痛みだけでなく緊張も和らげる神経ブロック治療法
通常は薬物治療法で効果が出ない場合に、神経ブロック注射が行われます。代表的なのは、仙骨裂孔ブロック、硬膜外ブロック、星状神経節ブロックです。
人は痛みがあると、反射的に身体が緊張してしまうもの。神経や筋肉、血管が緊張してしまい、それがさらに悪化を引き起こすという悪循環が起こる場合があります。
神経ブロックは、脊柱管狭窄症の波及で緊張している筋肉や血管をリラックスさせる働きがあります。
筋力を強化して痛みを改善する運動治療法
運動治療法は、身体の機能を維持することを目的にしたもの、脊柱管狭窄症の方でもストレッチなどで柔軟性を強化して改善を目指すもの、そして筋力そのものを強化することで背骨を支える土台そのものを鍛え、脊柱管狭窄症による痛みを分散させるといった目的があります。
脊柱管狭窄症ではずっと安静にしていると足腰も弱ってしまうので良くないとされています。ですが、強い痛みがある時(脊柱管狭窄症急性期)に動いてしまうと、改善どころか神経を痛めてしまう恐れがあるのでムリは禁物です。
日常的な動作そのものは脊柱管狭窄症急性期でも推奨されていますから、ムリのない範囲で身体を動かすことは多くの人にとって効果があると言われています。
併用することで効果が得られる物理治療法
物理的な治療法には温熱治療法、牽引治療法、電気治療法などがあります。
温めることで痛みを和らげる温熱治療法
温熱治療法には、脊柱管狭窄症の患部を温めて血流を促したり、筋肉の硬直をゆるめたり、心身をリラックスさせる効果があります。腰痛に限らず、脊柱管狭窄症による痛みがあるところを温めると痛みが和らぐことは経験的に理解できるのではないでしょうか。
脊柱管狭窄症による痛みがある部分を温めると血行が良くなって、発痛物質を押し流して酸素を供給することができるようなります。発症3ヶ月以内で運動治療法との併用が効果的だとされています。
引っ張ることで負荷を取り除く牽引治療法
牽引治療法は、脊柱管狭窄症による痛みがある部分を物理的に引っ張ることで、負荷のかかる神経への圧迫を和らげるというもの。
一時的に鎮痛効果がある電気治療法
電気治療法は、神経に低周波を通電させ、一時的に鎮痛効果を得ることができます。
ただ、現在電気治療法と牽引治療法は腰痛診療ガイドラインでは推奨されてはいません。人によって、効果がある場合とそうでない場合に分かれてしまうので、脊柱管狭窄症が改善されていく場合には、治療を続けると良いでしょう。
コルセット着用で一時的に痛みを抑える装具治療法
脊柱管狭窄症からくる痛みを感じる頻度が高いほど神経障害性疼痛、心因性疼痛が生じやすく、慢性化しやすいと言われています。コルセット着用することで正しい姿勢を保ち、痛みを感じないようにすることが大きな目的です。
ただ、長期間コルセットを着用し続けていると背骨を支える筋肉が弱ってしまう恐れがあります。そのため、通常は急性期のみに用いられています。
整体院による施術などで痛みを和らげる代替療法
代替療法は、柔道整復師(接骨院など)による施術や、指圧、マッサージなどを指します。
法的には代替療法には含まれないのですが、整体院やカイロプラクティックなどでも、脊柱管狭窄症の痛みを和らげる施術があります。
腰部脊柱管狭窄症に対する鍼灸治療
脊柱管狭窄症による症状発現の原因は、脊柱管が狭くなり、足を支配する神経の血流が低下するためと考えられており、鍼灸治療の最大の目的は神経血流を増加させることです。
脊柱管狭窄症の改善には自分に合った治療法を
人の脳は、痛みを感じ続けると、小さな刺激でも強い痛みを感じたり、痛みそのものがストレスとなって痛みの原因がなくなっても痛みを感じ続けたりすることがあります。
そして手術以外の痛みを抑える治療は、一時的であっても痛みから解放されることで、痛みを抑制するという本来持って生まれた機能を強め、自然治癒する可能性を高めることが目的です。
ですが、どうすれば痛みが和らぐのかは、人によって異なります。つまり、脊柱管狭窄症の治療法には、万人に効くといった決定的なものはないのです。
自分の痛み、症状に合わせて治療を組み合わせていくことが、脊柱管狭窄症の改善に対しては有効な方法になります。
1つの治療法で改善が実感できなくても、諦めないことが大切です。
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