そういえば親指の関節が前よりも曲がってきてるかも。
「外反母趾」は一度は聞いたことのある言葉ですよね?
そんな外反母趾を改善するにはどうすればいいのか?
そもそも原因は何なのか?
もしそのまま外反母趾を放っておくと痛みはどうなるのか?
今回はそんな外反母趾について説明していきます。
外反母趾とは?
外反母趾は1:10で女性に多い疾患です。ほぼ女性です。
足の親指の関節がくの字に変形し、その関節の部分が、靴を履くと中で圧迫されやすくなります。そして赤く腫れて痛みが出てきます。
中には、関節部にタコができたり、ひどい場合は人差し指と重なってしまうくらい変形して痛みを伴うこともあります。
親指の関節の角度がある一定の角度をこえると外反母趾と診断されます。その角度は20度です。この角度はHV角とよび、角度の大きさによって外反母趾の重症度が分類されています。
・軽症 :20~30度
・中等度:30~40度
・重症度:40度以上
外反母趾の角度が大きいから痛みが強いということではありません。角度と痛みはイコールではないのです。
足は唯一地面と接する場所
足部には、全身の約1/4もの骨が集中しています。これはなぜかというと、人間が直立二足歩行をして生活するために、足の骨が発達し、進化した結果だと言われています。
こんな足は唯一地面と接する場所なのです。
なので、足は人間の体の中でも特徴的な構造と機能があります。
足の重要機構「アーチ」
足には、3つの「アーチ」と言われる非常に重要な機能があります。
足を上から見ると、親指の付け根、小指の付け根、踵、の3つの点を結ぶと三角形ができます。その三角形のそれぞれの辺が3つのアーチになります。
- 「内側縦アーチ」親指の付け根から踵にかけてのアーチ(土踏まず)
- 「外側縦アーチ」小指の付け根から踵にかけてのアーチ
- 「横アーチ」親指の付け根から小指の付け根のアーチ
それぞれのアーチは、ドーム状になっており、足の裏の立体的な構造を形成しています。
「土踏まず」は聞いたことがあるのではないでしょうか?これは内側縦アーチと呼ばれ、なんとなく分かりやすいかと思います。
そんなアーチの役割は、
- 体重支持
- 衝撃吸収
- 歩行の推進
- 安定化
です。唯一地面と接する場所にはこのような機構が必要になるということです。
アーチは骨、靭帯、筋肉、腱によって支えられています。
外反母趾の痛みにはこれらのことが大きく関係してくるのです。
外反母趾の原因は?
多くの場合、先程説明したアーチが崩れることが、外反母趾や外反母趾による痛みの原因になります。土踏まずがなくなってしまった状態、いわゆる「偏平足」です。
では、なぜアーチが崩れてしまうのでしょうか?
アーチが崩れる原因
- 靴の影響
- 足の使い方
- 足の指の長さ
- ホルモンバランスの乱れ
- 遺伝的要因
- 外傷によるもの
靴
サイズの小さい靴や先が細い靴は、足先が圧迫されるので、長年にわたって履いている人は外反母趾や痛みの原因になります。
ハイヒールなどの踵の高い靴は、歩くときには必然的に、足の前方で体重を支えることになります。そのため横アーチが崩れる原因となり、ヒールが高くなればその負担は増大します。
足の使い方
アーチが崩れる原因として、knee-in toe-out(二―イントゥーアウト)という足の使い方になってしまっているのです。これは、膝が内側に入り、つま先が外側を向くことです。この動きによって特に内側縦アーチ(土踏まず)が崩れやすくなってしまうのです。
実際にやってみましょう。まず、足を肩幅に開いて、両膝をくっつけてみてください。内側縦アーチが崩れてますね?これがknee-in toe-outです。日頃から、しゃがむ時、歩行時、立ち上がり時などにこのような足の使い方をしていると、アーチが崩れる原因となり、外反母趾や痛みが出る原因となります。
足の指の長さ
足の指の形には3つの型があります。
- エジプト型・・親指が一番長く、日本人に多い
- ギリシャ型・・人差し指が一番長い
- スクエア型・・5本の指の長さがほぼ同じ
この中で外反母趾になりやすいのはエジプト型です。親指が長いため、靴の中でくの字の圧迫を受けやすいと言われています。
ホルモンバランスの乱れ
女性の場合は女性ホルモンによる影響を受けると言われています。
女性ホルモンのひとつに、エストロゲンというホルモンがあります。このエストロゲンは、女性らしい体の形成、妊娠の準備、肌のツヤやハリを良くするなどの働きがあります。さらにエストロゲンには関節にも影響を与えます。
50歳前後になると、更年期障害によってホルモンバランスが乱れ、エストロゲンが減少します。その結果、関節に影響が出て、アーチの低下、親指の関節の変形につながり、外反母趾や痛みにつながってしまうのです。
遺伝的要因
親や身内に外反母趾の人がいる場合は、外反母趾になる確率は高くなります。
ヒールを履いたことがなく、特にアーチが崩れる原因がなくても、外反母趾になる人は遺伝的な部分が関与していると言われています。
外反母趾の変形があっても痛みはなかったり、外反母趾の変形は軽度だが、痛みが出るという場合もあります。
外傷の既往
昔に、親指や足部に骨折や捻挫など、外傷の既往がある人は、外反母趾になる可能性があります。外傷によって、筋力が落ちて機能が低下した状態のまま、足の使い方が悪くなってしまってたり、アーチが崩れてしまっていることもあります。
などアーチが崩れる原因には色々あり、外反母趾や痛みの原因となります。
外反母趾の治療法は?
外反母趾の治療法は大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法
- ①運動療法
- ②装具療法
- ③靴選び
- ④テーピング
- ⑤歩行訓練
①運動療法
ホーマン体操
両足を前に出して長座位になります。ゴムを両方の親指に引っ掛けて、踵をくっつけて足を外側に広げます。広げた状態で10秒キープします。これを繰り返します。1セット30回を1日2セット行います。そうすることで、くの字に変形した親指を、正常な角度に近づけます。
母指外転筋訓練
足の指でグーパーをします。パーにしたときに10秒キープします。1セット30回を1日2セット行います。これは、親指の内側の筋肉を鍛えて、外に変形するのを抑えるための筋トレです。
タオルギャザー
床にタオルを敷きそれを足の指で手前にたぐり寄せる運動です。これは足の指を使うことでアーチを構成する筋肉を鍛えることができます。
可動域訓練
硬くなった親指の関節や、周辺の関節を動かして可動域を広げます。関節が硬くなっていると周囲の組織に負担がかかるのです。自分で関節を動かすには限界がありますので、専門の人に行ってもらうと効果が出やすいです。
②装具療法
痛みのある部位を除圧するパッドや、歩行時や夜間に使用する矯正装具、足底板挿入があります。中でも、アーチサポートのある足底板がよく使用されています。インソールとして靴の中に挿入することで、崩れたアーチを持ち上げて矯正します。足の形は人によって異なるため、オーダーメイドでの作成が必要になります。
③靴選び
やはり靴選びは重要になります。足の裏は唯一地面と接する場所なので、自分に合った靴を選んでください。幅の狭い靴だと痛みの出ることが多いです。靴屋さんで、自分の足のサイズや形にあった靴を聞いてみるとよいでしょう。
④テーピング
テーピングは、くの字に変形した関節を正常な角度に近づけた状態で固定したり、崩れたアーチをサポートする方法など、その人の足の状態や痛みの度合いに合わせて巻くことが重要です。
⑤歩行訓練
外反母趾の人には共通した歩き方があります。それは、足の裏全体でペタペタと歩く人が多いのです。なぜこのような歩き方になるかと言うと、外反母趾では足の筋肉がちゃんと機能していないのです。なので、先程いくつか紹介した運動を行うことをおすすめします。
歩行時に意識するポイントは、踵から地面に着いて、踵→足裏→指の付け根→指の順に、後ろから前に体重を移動させるイメージで歩くことです。
手術療法
保存療法を行っても効果が出ず、外反母趾の変形や痛みなどの症状が進行し、日常生活に支障をきたす場合は手術療法の適応になります。
外反母趾の手術は200種類以上あるといわれており、それぞれ、その人の外反母趾の状態に合わせて使い分け、または、組み合わせて行います。
①DLMO法
変形した関節に近い部分の中足骨という骨を骨切りし、そこをずらして正常に近い角度に矯正します。そして、ワイヤーで固定するというシンプルな方法です。
この手術は、軽度から中度の症例に適応になり、低侵襲手術です。
②Mann法
この手術も中足骨を骨切りしますが、DLMO法よりも少し踵よりを骨切りします。そして、関節部分を削り、硬くなった筋肉を切離し、角度を矯正して、数本のワイヤーで固定する方法です。
この手術は、中度から高度の症例に適応になります。
③関節固定術
破壊が進行した関節面を切除し、関節の角度を矯正して、ピンとワイヤーで完全に固定してしまう方法です。
この手術は、関節面の破壊が進行していて、変形が強い重度の症例に適応になります。
④人工関節置換術
関節部を切除し、人工の関節に置き換える手術です。耐久年数が20年前後なので60歳以上が適応になります。
この手術も、関節面の破壊が進行していて、変形が強い重度の症例に適応になります。
外反母趾を放っておくとどうなるの?
何度も繰り返しになりますが、足は唯一地面と接する場所です。アーチが崩れて、足の親指が変形することで、体重がかかるたびにしっかりと支えることができず、バランスが悪くなります。足でしっかり支えれないので、他の部分がそれをかばおうとして、代償運動が入ります。
例えば膝関節です。膝関節がかばうことで、本来の関節の動き以上に負担を強制させられ、痛みが出るリスクが高くなってしまいます。そうすると、変形性膝関節症という膝の痛みの原因になったりしてしまいます。
さらに、膝に痛みが出ると今度はそれをかばって股関節や腰に負担がかかってしまうのです。こういうことは、無意識のうちに起こっているので、腰痛の患者さんを診ると原因が外反母趾だったりすることがあります。
また、バランスが悪くなったせいで、全身でそれを支えようと色んな筋肉が緊張してしまいます。そうすると、姿勢が悪くなったり、肩こりや頭痛、その他の部位の痛みの原因になってしまいます。
外反母趾、たかが足の親指の問題でも、それを放置することで、全身のあらゆるところに影響を与えてしまうのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は外反母趾について説明しました。
足は特徴的な構造機能があります。そのため、それらのどこかが破綻すると外反母趾につながります。外反母趾からさらに他の部位への影響が出るので厄介ですね。
外反母趾の変形の度合いは痛みとは一致しません。
外反母趾にならないように予防するのも大切ですし、外反母趾の人も今の状態よりも進行しないように、できることはやっておいた方が良いですね。
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