外反母趾の原因は、靴の影響であったり、歩き方であったり様々ですが、これはあくまで要因です。
本当の原因は何か?本当の原因は、アーチが崩れてしまうことによって外反母趾になると言われています。いわゆる偏平足です。
では、このアーチとはいったいどういう機能がるのか?アーチが崩れてしまう原因は何なのか?
今回は、そのような外反母趾の本当の原因について詳しく説明していきます。
外反母趾とは
足の親指の付け根の関節が変形して内側に突き出し、親指の関節がくの字に曲がってしまい、人差し指の方に向いてしまったのが外反母趾です。
そして、親指の付け根の出っ張った部分が靴の中で当たることで赤く腫れ上がり、痛みが出てきてしまいます。
さらに、親指が人差し指と重なってしまうことで、圧迫による痛みが生じ、痛みで歩くことができないくらいにまで症状が悪化することもあります。
男女比は1:10と圧倒的に女性の方が多くなっています。
くの字に曲がった関節の角度が20度以上で外反母趾と診断されます。この角度はHV角とよび、この角度によって重症度が分類されます。
・軽症 :20~30度
・中等度:30~40度
・重症度:40度以上
に分類されます。
古くから、幼少期より屋内でも靴を履く習慣のある欧米では、外反母趾を始めとした足部の有痛性の障害に対して治療の研究が行われて来ました。
日本では、靴を履く習慣がなかった為、外反母趾が治療対象となる事は少なかったです。
下駄を履いていた時代は、外反母趾の人はほとんどいなく、靴を履くようになってから外反拇趾が起こるようになったと言われています。かつてインドや中国で、まだ靴が普及していない頃の人々の足を調べたところ、外反母趾はほとんどいなかったという報告もあります。
しかし、近年では生活の欧米化が進み、靴を履く機会が増えたことによって、日本でも治療対象の増加とともに、外反母趾の原因の研究も進んできました。
足の構造
まず外反母趾を理解する上で足の構造を知っておくと理解しやすいでしょう。
足の骨
足部(くるぶしより下)は大小様々な骨で構成されています。足の指の骨が14個、真ん中の中足骨が5個、踵(かかと)部分に7個、全部で26個。これに「種子骨」という親指の付け根の裏にある小さな骨2個を加えると片足28個の骨になります。両足で56個になります。
人間の全身の骨の数は全部で206個なので、全身の骨の約1/4が足に集中していると言うことですね。
これは、人間が直立二足歩行をして生活するために足の骨が発達し進化した結果なのです。
それぞれの骨同士は、お互いに関節で連結されており、すべて可動性があります。1つ1つが靭帯や筋肉、腱などで安定化されており、体重による強い衝撃にも耐え得る力学的に安定した頑丈な構造をしています。
足の重要機能「アーチ」
そんな足部にとって、機能的に非常に重要になるものが「アーチ」です。足部には3つのアーチがあります。
わかりやすく説明しますね。
まず、足を上から見てください。
親指の付け根、小指の付け根、踵、の3つの点を結ぶと三角形ができます。その三角形のそれぞれの辺が3つのアーチです。
- 「内側縦アーチ」親指の付け根から踵にかけてのアーチ(土踏まず)
- 「外側縦アーチ」小指の付け根から踵にかけてのアーチ
- 「横アーチ」親指の付け根から小指の付け根のアーチ
それぞれのアーチは、ドーム状になっており足の裏の立体的な構造を形成しています。
その役割は、体重支持、衝撃吸収、歩行の推進、安定化などです。
足の裏は唯一地面と接する部分なので、このアーチは人間が歩行をする上で非常に重要な機構となります。
アーチは骨、靭帯、筋肉、腱によって支えられています。
足の構造はなんとなく理解できましたか?
簡単な説明でしたが、足という部分は、かなり複雑な構造で、機能的に重要な部分なのです。
「足は人間工学上、最大の傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である。」
これは、イタリア盛期ルネッサンスの偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチが、足について述べた言葉です。
外反母趾の原因は?
外反母趾の原因になるのは何なのでしょうか?
それは「アーチの崩れ」(いわゆる扁平足)ということが外反母趾になる原因と言われています。
アーチが崩れる原因
では、アーチが崩れる原因としてはどのようなものがあるのでしょうか。
- 靴の影響
- 足の使い方。歩き方
- 足の指の長さ
- ホルモンバランスの乱れ
- 遺伝的要因
- 外傷によるもの
などの原因があります。
靴
サイズの小さい靴や先が細い靴は、足先で親指が圧迫されるので、変形する原因となります。
ハイヒールなどの踵の高い靴は、歩く時に足の前の方で、着いたり蹴ったりして体重を支えます。そのため、横アーチが崩れる原因となります。高いヒールであれば余計に負担がかかりますね。
横アーチが崩れると、横アーチの真ん中くらいに胼胝(べんち)と呼ばれるタコができてしまいます。
これは、横アーチが崩れてしまうことが原因で足が開いたような状態になり、一般的に「開張足」と言われています。
横アーチが崩れ開張足になると、外反母趾になる原因の1つとなります。
足の使い方
アーチが崩れる原因として、一番は靴が原因と言われることが多いですが、一番の原因は、足の使い方・歩き方という報告もあります。
内側縦アーチ(土踏まず)が崩れる原因として、knee -in toe-out(ニーイントゥーアウト)という動きになってしまっているためです。
これはどんな動きかと言いますと、膝が内に入り、つま先が外に向くことです。この動きが原因で内側縦アーチが崩れてしまうのです。
足を肩幅に開き両膝をくっつけてみてください。この形がknee -in toe-outです。
内側縦アーチが崩れているのがお分かりでしょうか?
普段から、立つ時、しゃがむ時、歩く時に、このような足の使い方をしていると内側縦アーチが崩れてしまい外反母趾になる原因となりま
す。
そういう人の多くは常に母趾球(親指の付け根の裏)で体重を支えるような体の使い方になってしまっています。
なので、母趾球や親指の内側にタコができやすくなるのです。
現代の若年者の女性の足のアーチの平均値は、高齢者の女性の平均値よりも低いという調査結果も出ています。
特に、子供のころからそういう歩き方をしていると、将来、扁平足になる原因となります。
ということは、外反母趾になるリスクも高くなるということですね。
子供の足は、成長途中で骨が柔らかく不安定な状態です。子供の足に合った靴を履かせることで、正しい歩行や成長のサポートができます。
こういった靴や、良くない足の使い方が相互的に影響することで、外反母趾発症のリスクを高めていると言うことなのです。
足の指の長さ
また、足の指の長さも外反母趾の原因とます。
足の指の形には3つの型があります。
- エジプト型・・親指が一番長い、日本人に多い
- ギリシャ型・・人差し指が一番長い
- スクエア型・・5本の指の長さがほぼ同じ
この中で外反母趾になりやすいのは、エジプト型です。親指が長いので靴の中で、くの字の圧迫を受けやすいと言われています。
ホルモンバランスの乱れ
さらに女性の場合は、ホルモンによる影響も原因のひとつと言われています。
50歳代前後の女性は更年期を迎えるとホルモンバランスが乱れます。
女性ホルモンは2つありエストロゲン(卵胞ホルモン)というホルモンと、プロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンがあります。
そのエストロゲンの働きは、女性らしい体の形成、排卵と同時に妊娠の準備や、骨の形成を促す、肌のツヤやハリを良くするなどの働きがあります。
さらにエストロゲンには、骨や関節にも影響を与えているのです。
関節の動きをスムーズにさせる働きをするのはコラーゲンです。そのコラーゲンの生成には、エストロゲンが関係します。
40代後半あたりから、エストロゲンの分泌が減りはじめ、女性ホルモンのバランスが乱れることによって、骨量は減少しはじめます。
ということは、女性は男性よりも骨粗鬆症になりやすいということにつながりますね。
外反母趾や関節リウマチなどの骨や関節の変形による疾患にも関連するとされています。
つまり、更年期障害によるホルモンバランスの乱れにより、エストロゲンが減少することが原因となり、骨や関節に影響を与え、足のアーチが崩れ、外反母趾になるリスクが高くなってしまうのです。
また、女性に多い原因の1つとして、女性は男性よりもハイヒールや先の細い靴を履く頻度が多いことや、関節が柔らかいこと、筋力が弱いことなどが考えられています。
遺伝
その他には、遺伝的な原因もあります。
今までずっと先の細い靴や、ヒールの高い靴を履いて生活してきた人でも、アーチが綺麗に保たれ、外反母趾とは全く無縁の人もいます。
逆に、全くヒールを履いた事もなく、いつも運動靴やスニーカーを履いて生活をしているのに、若い頃からすでに、扁平足で外反母趾になっている人もいます。
そのような人は遺伝的な原因があると言われています。
親や身内に外反母趾の人がいる場合は、同じ足の形をしているため同じような負荷がかかりやすく、外反母趾になりやすくなります。
親が外反母趾の人は気をつけた方が良いかもしれませんね。
外傷の既往
あとは、以前に骨折や捻挫などの外傷の既往のある人も将来的に、外反母趾になる原因になります。
捻挫や骨折の程度にもよりますが、骨折によって骨そのものが変形して残ってしまっている場合や、手術やギプス固定によって足の筋力や機能の低下がある場合は、アーチが崩れる原因になってしまうのです。
いかかがでしたでしょうか?
足部の代表的な疾患である外反母趾の原因について説明してきました。
痛みや変形が強い場合は、手術の適応となる場合もあります。
今履いている靴や足の使い方など、今からでも見直せる部分があるので、少しでも外反母趾の発症のリスクを下げて原因を減らしておいた方が、今後の生活のためになりますよ。