椎間板ヘルニアの治療は、保存療法と手術療法の2つに分けられます。さらに、保存療法には一時的な痛みをなくす薬物療法、痛みが落ち着いてから椎間板ヘルニアの完治を目指す、理学療法があります。
慢性化している人、痛みを繰り返す人、痛みで生活ができない人など、その人の症状に合った治療法があります。大切な椎間板を温存させるためにも、検査をした上で、よく相談してから治療を受けましょう。
痛みを抑えることを主とする一時的療法
一時的療法は根本的治療ではなく、その多くが激しい痛みを抑えるために行う療法です。ヘルニアの原因ではなく、痛みそのものを薬剤で取り除きます。
鎮痛薬(飲み薬)
一般的にはロキソニンやボルタレンという、炎症を鎮めてくれる鎮痛薬が処方されます。長年使用すると、胃潰瘍や腎機能の低下など副作用が現われるので注意して服用する必要があり、自己判断で服用するのは禁物です。あくまで急性期の痛みへの対処として使用します。
神経ブロック注射
神経に局所麻酔やステロイド薬を注射する方法で、痛みを和らげるために用いられ、入院が必要な場合もあります。飲み薬では痛みが治まらない場合はこの神経ブロック注射がとられ、その注射方法としては硬膜外と神経根ブロックの2つのがあります。麻酔や抗炎症剤が神経の働きを鈍らせることで、痛みをブロックできるという仕組みです。
安静にして行う治療
冷却と消炎効果のある「冷湿布」
急性の炎症を起こしている間は患部を温めるのではなく、冷湿布を用います。発症してから3日間の急性期は、炎症が特にひどい状態だからです。
冷湿布はただ冷やすだけではなく、その薬効成分により炎症を起こす物質の生成を抑えることができます。よって急性の時にも使えますが、慢性の時にも効果があります。その消炎効果を狙いたいなら、温熱療法と一緒に行っても大丈夫です。
血行を良くして新陳代謝を高める「温熱療法」
痛みのある箇所の筋肉の緊張をとり、凝りをほぐすために行われます。収縮した血管がゆるまり、血行をよくし、新陳代謝を促進させるので、自然治癒力も向上させます。
温熱療法では、温熱器を使用したり、遠赤外線照射、ホットパックなども使われます。家であれば、半身浴などで温熱療法ができます。
また、ホッカイロなどでも代用できますが、自己判断での使用は禁物です。特に急性期には温めると悪化する可能性があるので、気を付けましょう。
理学療法
痛みが落ち着いた時に開始する牽引療法や、マッサージ、鍼治療などがあります。手術しても繰り返す痛みに対しても行うことができる治療です。
血行をよくするための「マッサージ」
痛みを取るために、マッサージで筋肉のコリをほぐして血行をよくします。痛みやしびれを恐れたり、心因的要因で身体を動かさずにいた場合、マッサージをすると身体が楽になり痛みが取れます。
ここでのマッサージは治療院でのマッサージを指します。ボディケアなどの民間サービスのマッサージとは違うので注意してください。
自己再生を促す「鍼治療」
椎間板ヘルニアには、昔からある針での治療も有効です。針を身体に刺して筋肉に刺激を与えます。先生によっては奥のほうの骨にくっついているような筋肉にも針を通すことができます。
刺激によって異常を察知した身体は、それを治すための物質を出し始めます。原因不明であったり、しつこい痛みがなくなるのは、この物質のおかげです。
つぶれた椎間板を伸ばす「牽引療法」
入院して行うタイプと、通院して行うタイプの牽引があり、ただ引っ張るのではなく専用の器具を使って身体を伸ばしていきます。牽引療法では、骨盤や両足にベルトをかけ、重りをつけて引っ張ります。
神経根の圧迫を取り除いたり、筋肉を弛緩させることができる方法です。圧力などで押しつぶされてしまった椎間板を伸ばしてあげることができるので、痛みやしびれがなくなり完治する人も多くいます。
手術療法
すでに膀胱直腸障害(排尿困難など)が起きている場合や、歩けないほどの神経麻痺が見られる場合は、手術をします。また、他の方法を2〜3カ月ぐらい継続しても効果がない、痛みに耐えられない場合にも手術を受けます。
手術を受けることで大半は完治しますが、椎間板ヘルニアの場合は、その後また痛みが起きたり再発することがあるので、一度完治しても油断してはいけません。
切開して椎間板を切除する手術方法
該当箇所を切開して、ヘルニアを切除する方法です。ヘルニア部分を直接見ながら行う「直視下(ラブ法)」、顕微鏡で拡大して見ながら行う「顕微鏡下(マイクロラブ法)」、顕微鏡や内視鏡を入れて手術をする「内視鏡下」の3つの切除術があります。切除術とともに、骨を金属などで固定する固定術も同時に行うことが多いです。
切開せずに椎間板を切除する手術方法
比較的新しい手術法で、身体の負担が少なく、高齢者でも受けることができます。しかし、適応可能なヘルニアのタイプが限られているというデメリットもあります。また、手術法によっては先進医療となり保険が適用されず、高額な自費診療となります。(2018年2月現在)
特にレーザーを使用した手術「PLDD」は、局所麻酔だけで済み、日帰りで受けられ、出血もほとんどない手術療法なので、入院が必須だった椎間板ヘルニアの治療に革命を起こしました。
椎間板ヘルニアの治療には理学療法の利用も!
椎間板ヘルニアの治療方法は手術だけではなく、様々なものがあります。程度にもよりますが、手術をしなければ、絶対に飛び出したヘルニアが元に戻らないというわけではありません。理学療法なども利用して、椎間板ヘルニアと上手に付き合えるようにしましょう。
しびれや痛みをただ抑えるだけではなく、人間の自然治癒力を使って椎間板ヘルニアを治療することができますよ。
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